50歳の誕生日、マリは仕事帰りに車を運転しながら、思いたって少し遠回りした。
クーペを走らせ、どこかへ寄り道しようかと考える。
いつもの様に家では母親が夕飯を用意しているはずだ。誕生日の祝いはいらないと30代半ばから伝えてある。それでも何かしらマリの好物が並んでいる。

初老、と言う言葉が浮かぶ。そう、自分は死に近づいているのだ。波乱とは無縁の生活。こうとしか生きられなかったのか。やらなかった後悔、選んでしまった後悔。

そろそろ親の介護に向けて、車を買い換える予定だ。週末はセダンを見に行こう。
何処にも寄り道する当ても無かった。マリはそのまま家路に着いた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-04

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