蜃気楼

ああ、こうして外を歩いていると

じぶんがいやに ちっぽけな存在に思えてくる

目にうつるすべてが おれを哀しくさせやがる

ふつうというのはこんなにも

甘美で 難解で 憎たらしいものであったか

おれがそれを遠ざけているのか

それがおれを遠ざけているのか

もう、わからない。わかりやしない。

…どっちだろうと、構わないさ。

ただ、一度きりでいいから

おれも、おまえをそこまで悦ばすふつうというやつを

おまえの唱える ふつうというやつを

骨の髄まで、子供のように目を輝かせて

貪り尽くしてみたかった。

蜃気楼

蜃気楼

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-04

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