蜃気楼
ああ、こうして外を歩いていると
じぶんがいやに ちっぽけな存在に思えてくる
目にうつるすべてが おれを哀しくさせやがる
ふつうというのはこんなにも
甘美で 難解で 憎たらしいものであったか
おれがそれを遠ざけているのか
それがおれを遠ざけているのか
もう、わからない。わかりやしない。
…どっちだろうと、構わないさ。
ただ、一度きりでいいから
おれも、おまえをそこまで悦ばすふつうというやつを
おまえの唱える ふつうというやつを
骨の髄まで、子供のように目を輝かせて
貪り尽くしてみたかった。
蜃気楼