青灰色の空の下で

まだ、消えていない。

顔も、名前も、わたしの名前を呼ぶ声も、重ねてくれた手のひらの温度も、あなたと一緒に見てきた数え切れないほどの景色も、最後まで果たせなかった約束も、

ひとつ残らず消えていない。

青灰色(せいかいしょく)の空の下で、

ひとりで蹲って泣いていたわたしのことを、あなたは見つけてくれた。

まるで偶然ではなく、必然だったかのように。

はじめて月を見たような顔をしていた。

あなたは、わたしのすべてだった。

あなただけに捧げてきた人生だった。

いまも、あなたのことを想っている。

綯い交ぜになった情景の中で、確かに呼吸している。

まだ、消えていない。

消して、たまるものか。

この胸に疼く痛みだけが、真実だ。

あの日と同じ空の下で

わたしは、わたしたちは、

いつまでもいつまでも、永遠みたいな一瞬を噛みしめている。

青灰色の空の下で

青灰色の空の下で

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted