愛の呪い

僕は永遠の命を持つ呪いをかけられている。
愛されること、愛することが
僕の呪いを解く唯一の方法。
愛された分だけ、愛した分だけ脆くなっていく。

だから、誰のことも好きになってはいけない。


彼女と出会ったのは、冬が春に溶けた頃のことだった。
まだ高校生だった彼女が突然、目の前にやってきて…
『私と付き合ってほしいの。』と、告白してきた。

僕は誰のことも好きになってはいけないというのに。

「残念だけど、僕は誰のことも好きになりたくない。」
『なんで?』
「僕は呪いで永遠の命を持っているからだ。」
『そんな呪い、私が解いてあげるから!』
「出来るわけないよ。君は先に死ぬし。」

僕は断り続けたが、彼女は諦めなかった。
そして、いつのまにかふたりでいることが増えた。

気付けば何年もの月日が流れていた。
彼女の肌にはしわが刻まれ、
髪の色もほとんど白くなっていた。

僕だけが、あの日からなにひとつ変わっていない。

彼女が最期を迎えようとしていた。
僕がそっと彼女の手を握ると、
彼女は弱々しく握り返した。

『ごめんね、67年しかいっしょにいられなかった。』
「だからやめとけ、って言ったんだ。」
『でも、私はしあわせだったわ。』
「どうして。」
『あなたを愛していたから。』
「お前はいつもそれだな。」

彼女は静かに、

『あなただって、私を愛していたでしょう…?』

と言った途端、
握り返して来る手の力が抜けた。

「あぁ、お前を愛していた…ごめんな。」

認めざるを得なかった。
彼女のために、初めて涙を流した。

すると、僕の肌にもしわが刻まれ始め、
髪がものすごい勢いで白くなっていった。

僕は誰のことも好きになってはいけなかった。

愛という名の呪いを
かけられたり、かけたりすると、
僕の命は永遠ではなくなるからだ。

彼女の手を握りしめたまま、僕は骨になった。

愛の呪い

愛の呪い

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-02

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