シンプルイズベスト

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ビッグバンのきっかけはきみのしょうもないこだわりに似ている。太平洋戦争はきみのいらだちにかき消される。飢餓と貧困と砂漠化は全部きみの背中が背負うことになる。そうでもしないと薬が切れちゃうから、お願いだよ。このヘリクツをちょっと預けさせて。右心房と左心房、それから心室。全部にこの挽肉みたいなヘリクツを預けさせて、心臓の肉詰めにしてしまって。
やっかいごとは全部きみに預けて、ぼくはまた一段と単細胞になる。きみが良かれとしなかったから聖書に載らなかった単細胞。越冬の準備に黒いマフラーを用意することくらいしかできず、そのマフラーはちょっときつめに締めてある。ひだまりと月光を微積で一から算出するきみの越冬はほんとうにばかばかしい。きみの心房は太陽になって、きみの心室は月になる、出産予定らしい。なんだよそれくらいか、くだらねえな。黒いマフラーの毛糸をつまんだきみのせいで、マフラーはただの毛糸になった。きみから二メートル、ぼくからも二メートルのところにソーシャルディスタンスで祝福を百個くらい置いて、心臓の肉詰めを口いっぱいにほおばる。ぼくらはきっとシン・ホモサピエンス。

シンプルイズベスト

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心臓の肉詰めを口いっぱいにほおばる。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-02

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