悪夢 ④

招待状に同封された地図を頼りに、パーティ会場を探した。
ホテルか洒落たレストランかと思っていたが、BARのようである。
お忍びパーティなのだろう。人目のつかない店を選んだのだろうと思った。

店は、大きな通りから隠れているような場所にあった。
店の看板と招待状に書かれた店の名前を何度も確認し、重いドアを開けた。
中から優しい灯りと音楽が聞こえてきた。
クリスマスパーティの会場を想像していたが、僅かな飾りつけがあるだけで
落ち着いた店内だった。

ここでいいのだろうか?と心配になったが、招待状を確認したので
間違いないだろうと自分に言い聞かせて、近くの席についた。
完璧なお忍びなのだろうか?とちょっと妄想的期待が膨らんだ。
ここは、待ち合わせだけの場所かもしれない。
相手は、メイサなのだから・・・ガードしているはずだ。

店内には、客が一人だけだった。
奥のテーブルにサラリーマンと思われる男が座っていた。
こいつも招待客か?と思ったが、浮かれた顔をしていない。
招待客なら、きっと俺のように浮かれているはずだ。

男は、ビールを飲み、すぐに出て行った。
暗い奴だなぁ・・・と感じたが、俺の頭は、メイサでいっぱいだった。

ついに店内は、俺ひとりになった。
突然、灯りが消えた。おおっ なんだ?!
予想していなかった俺は、驚いて椅子から落ちそうになった。

微かな鈴の音が聞こえてきた。鈴の音は、だんだん大きくなり、
自分に近づいて来る感じがした。
その時、眩しい程にスポットライトがついた。
あっ!サンタだ!俺は、興奮した。子供に一瞬にして戻った。
サンタをよく見ると いや正確には、サンタの衣装を着た人を見ると
そのシルエットは、女性だ。いわゆるミニスカサンタである。
この脚線美に体のラインは・・・・メイサ?
スポットライトの眩しさとサンタの付け髭で顔がよく見えない。
ここまで来たのだ。メイサに間違いない!
益々、俺は、興奮し心臓がバクバクと音をたてはじめた。

店内が明るくなり、サンタの姿がよく見えるようになった。
その時、サンタが「メリークリスマス」と叫んだ。


うううっ この声は・・・・。
サンタは、付け髭を取った。が、しかし 顔には髭が!。
「役所!~~~~」俺は、叫んだ。

なんで 役所なんだと・・・俺は、体に疲労と倦怠感を感じながら
ぶつぶつと帰り道を歩いていた。
通りには、イルミネーションが俺を笑うかのように点滅を繰り返していた。

悪夢 ④

文中に登場する団体・個人は、実在したとしても 本作品とは一切関係ありません。
あくまでも 作者の悪夢を書き綴ったものです。

悪夢 ④

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-17

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