この世界の何もかもを愛している

放たれた言葉は好き放題反響して、結局は私のもとに戻ってきてしまった。
誰の目にも映らなかった赤、情熱と血の心、微粒子がぶつかった硝子にひびが入って、ひびが入った柱は傾いで、傾いだ部屋からは立ち退かなければいけなくなった。
壊れようとする世界、壊れようとする私が世界にそぐわないのは知ってるよ、それでも新しい秩序の真ん中には私が必要だって知ってるよ、この世界の何もかもを愛しているって知ってるよ。硝子の向こうへ声を上げてひびを入れて、中からあたたかい液が漏れ出てくる。好きだ、この世界の営みが、硝子を見つめて生きる無秩序な人間が。吐き出す言葉がぶち壊す破片、あたたかい培養液に慌てふためいては、排気ガスを照らす電球をはめ続ける人々が好きだ。
ここはすごくいい部屋だった。さようなら未練、もう二度と会えない。新しい世界、はじめまして。愛しているよ。

この世界の何もかもを愛している

この世界の何もかもを愛している

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-22

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