傷について

傷について

創傷と睡眠が一秒おきに繰り返されて、そうすることでぼくらは時間ってやつを受け入れるんだろうけど、さ。傷口を新世界だって思いこんで受け入れるのはどうにかしていると思うぜ。でもそれはまぎれもなく新世界で、ぼくは呆れることしかできなかった。同姓同名の赤の他人に会うことほどヒサンなこともないと思う。
いまぼくは生きている、つもりだ、生きることに飽きたら、どうしようかどうしたいかな。よくもまあ飽きもせずここまでやってこれましたね。ソシャゲみたいなガチャがあったら、飽きなかったのかな。太字で誇張してるみたいな心音と、止まらない血流と、置いてけぼりをくらった体。あの子は山手線に轢かれなかったし、あいつはODできなかった。そうやって量産されていく、置いてけぼりをくらったからだが東京のいたるところに蔓延していて、雨は降っているそれでもこの世界はすばらしい。サブスクで音楽は聴けるけどやっぱりMステは続いているし。指先を紙で切っちゃった、そういう思いがけない小さな傷口だけが新世界への入り口だけど、小さいからすぐ忘れられてしまう、思いおこしてみれば、やっぱりぼくも大人になっていたんだなあ。

傷について

傷について

雨は降っているそれでもこの世界はすばらしい。サブスクで音楽は聴けるけどやっぱりMステは続いているし。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-22

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