光る犬

反転した丘から
一匹の犬が駆けてくる
光りながら
あべこべになった場所では
その犬だけが正しく白い
尨毛は秋の田のように
さざなみとなり
もたらされた揺らぎで
人は正気を取り戻す

一匹の犬が駆けていく
いつまでも駆けていく
表裏の覆った丘から
接続された新たな場所へ
そこでも人は眼をこすって
光る犬を見るのだろう
飼い主はやや諦めた表情で
犬の後ろを散歩する




月刊ココア共和国 2020年5月号掲載

光る犬

光る犬

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-22

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