聖者の行進(7)

七 果てしなき道へ

「俺、大丈夫かなあ」
 D夫は不安そうな顔で呟く。
「だいじょうぶです」「だいじょうぶだわ」
 両脇の二人の男の子と女の子が、何の根拠もなく力強く答える。
「リーダーは、志が高ければ、それでいいんです」
「俺、志はないけれど・・・」
「いえ、前を向いているじゃないですか」「そう、前に進んでいるわ」
「後ろのみんなは不安で、寂しいんです」「そう、寂しいんです」
「あなたが前に進むことで、みんなが元気になるんです」「そう、元気になるんです」
「前に進むことが大事なんです」「大事なんです」
 二人に励まされ、D夫はなんとなく納得する。
「前に進むのはいいんだけれど、この道はどこがゴールかなあ」
 D夫は、どこまでも果てしなく続く道に、ゴールを求めて、遠い目を馳せた。

聖者の行進(7)

聖者の行進(7)

死んだ者たちがかつて生きていた街を行進し、どこかへ向かう物語。七 果てしなき道へ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-17

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