宇宙創造
宇宙創造
たいていの飲食店で、二人掛けのテーブルというものは、二人が向き合って座るようになっていて、だから僕らもこうやって向き合ってるわけだけど、さ。ろくに目も合わせないよね。そういう時間が一番気持ちよかったりするから、僕らはきっと恋人どうしなんていう御大層な関係じゃない。
ひとさしゆびをふりあげる。ぴかっ、とちへいせんがひろがって、いちめんがずっとさばくになる。さばくにふたりきりでせなかあわせてたっていて、だからしんぞうがさびしかった。ふぇねっくとかはいなかったし、たんぶるうぃーどもころがってこなかったからさばくじゃなかったのかもしれない。あけがたかゆうぐれかよくわからないままになっていて、そのままかわいていくのはみじめだからめをとじて、すばやくあけてみた。
くらいみずのなかだった。うえかしたかはわからないけど、きみがちかくにいた。たんすいなのかかいすいなのかあじがわからないからなんともいえないけれど、いのちはどこにもみつからない。みんなここからうまれてくるのかな、ほんとうに。からだのろくじゅっぱーせんとはみずらしい。よんじゅっぱーせんとをいますぐはきだしてしまいたかった。ぼくらはまたすばやくめをとじる。
なんきょくのこおりのなかでこおっていた。むこうにもまたこおっているものがあって、だからきみだとかってにきめつけた。つめたさをぜんぶのしんけいでかんじていた。いっせんねんでも、いちまんねんでも、こおりはとけそうにないからみうごきひとつとれなかった。だからこおったしあわせがあった。このままきれいなすいしょうになってもいいなとかおもった。でも、ざんねんなことにめをとじることができなかった。
そんなかんじのことをうちゅうができるまえにかんがえていた。ふたりぽっちだったけど、げんそがないからさびしいってぼやくしんぞうもなかった。ふりあげるひとさしゆびがなかったからすこしむずかしかったけれど、ひとさしゆびをふりあげようってことをぴかっとひからせた。すると、時間がぐわーっと広がってささささっと色がついて電子と陽子と中性子と銀河のなかでばん! って音をたてて僕が誕生して、君の長い髪が指に絡みついた。シリウスと白亜紀のあいだに地球の大気が流れ込んで、僕ら二人の塒になって、だから炭酸飲料はおいしくて、文明が大河が生まれたり消えたりすることを傍観していたら、二人の間には二杯のアイスコーヒーが置かれていた。
「馬鹿。気持ち悪い。」君の言葉に僕は救われたような気がしていた。
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