マスメガあるいはメガマス

今年は私にとって本当にマスク黎明期です

それまでしたことなかったのにコロナの影響によってマスクをするようになって久しい。
「意外といい」
それに加えて、マスクの良さがわかって久しい。

何がいいって、マスクをしていると独り言がはかどるのである。それまで、
「マスクって耳を削いでくるでしょう？」
って言ってマスクを厭うていたけど、マスクをして口元が隠れると独り言言い放題。それに心配したほど耳も削がれない。子供の頃は秋から冬の乾燥時期に掛けて耳の端がちぎれてきて、その状態でマスクをすると本当に耳が取れて耳なし芳一になるんじゃないかと思ったものであるが、今考えると子供の頃はアトピーの気があって、ちょっと雑木林に入ってもかぶれるような感じだったから、そのイメージが強すぎて大人になってもマスクに対して過剰な反応をしていたのかもしれない。

今はもう大丈夫らしい。雑木林に入ってもかぶれないし。

勿論最初は怖かった。例えば何かのきっかけで耳ポーンになるんじゃないかと思っていた。例えばちょっと他人とぶつかったりした瞬間、マスクがずれてゴムが張って、耳がカタパルトみたいにぽーんってなるんじゃないかと思ったりしてた。大丈夫だった。何度他人とぶつかっても、何とぶつかっても耳ポーンは発生しなかった。

で、安全性が定まると、今度はマスクをするとどうなるのかというのに興味が注がれた。

その結果、
「独り言言い放題じゃん」
という地点に到達した。各所で再三にわたって述べているけど、独り言というのは脳を整理している状態であって、決して悪いものではないんだという。ちなみに貧乏ゆすりとかもそれと同じなんだという。

で、もしかしたら将来的にサイエンス雑誌とかの記事で、
「貧乏ゆすりは悪いものです。悪です。害悪です」
って言われても、もう私はその案に飛びついたので変更はできない。生涯無理。子供の頃明るい所で本を読めって教わって大人になって突然、暗い所で本読んでも別に目は悪くなりませんよって言われても受け入れられないでしょう？それと一緒だ。

その学説が唱えられた瞬間、私は独り言別に構わない派になった。

んで、マスクと独り言とのこの適合性ったらもう無いんだ。マスクを開発した人も独り言言いたくて開発したんじゃないかと思えるくらい。この両者の関係性は群を抜いてる。

独り言は何も言葉をはっきり言う必要ない。頭蓋骨を通して自分の耳に届けばいいのである。それで聞き取れれば問題ない。そしてその時口は若干動く可能性があるけど、それをマスクがすっぽりと覆えば、外からは黙ってるようにしか見えない。

独り言を厭う人間は、話し相手もいないのに口が動いている他人を厭うのである。

マスクを着用したら、その際の稼働部位が生地のドームに覆われる。

これはもう素晴らしい。今年一番の発見であった。ついでになんかコロナとかインフルとかそう言うのの菌の感染も防いでくれる。大変によろしい。ありがたい。夏の頃はマスクも暑かったけど、最近涼しくなって別に蒸れたりもしなくなって、ますます良い。

実際それによって私の独り言は増えて、なんとなくこういう所に投下する話の数も増えたような気がする。正確に確かめたわけではないけど、でもちょっと増えてるような気がする。

そしてもし増えているとしたらそれはどこぞかしこぞで構わずに独り言をブツってる結果である。と思う。そうであったらうれしい。

しかし、まあ、

いいモノ物事には悪くなった側面も存在する。それはもう避けようのない事だ。１００％誰にとってもいいモノというのは存在しない。誰かが喜べば、誰かが悲しんでいるモノなのである。万物そうなのだ。世の中はそういう風に出来ている。

マスクをするようになって眼鏡とマスクの交流が過度になり、それでときどき、宿主である私を苦しめることがある。

そう言う事が多い。増えたっていうかまあ、増えたも何もマスクが初めてだから比較対象が無いんだけども。

多い。とにかく多い。

っていうか大体そう。

普段からメガネをして生活してる。コンタクトにすることは考えたことがない。レーシックも今の所予定にない。

当然メガネはつるが耳にかかる。

で、それの上にマスクの輪っかがかぶさる。

メガネが曇る。

拭こうとして眼鏡を外すと眼鏡のつるにマスクの輪っかが絡みついている。

「ぎゃあ！」
痛い。

ゴムがビーンバチン！ってなったり、しなった眼鏡のつるが耳にモンゴリアンチョップみたいな事をしてくる。

毎回。

毎回そう。

「お前らああ！」
再三にわたって注意はしてる。注意はしてるし、気をつけてもいる。でも、どこかでこう、油断する瞬間がある。だって自分の体の事だもん。常に気を付けることは出来ない。外出る時毎回完全防備でガスマスクで家に帰ったら全身をアルコールで消毒してプールの塩素剤を湯船に入れてそれで全身を清めるとか、出来ないでしょう？ちょっとコンビニに行った後、清めて、忘れ物したからまた外出る時ガスマスクと完全防備で、取りに行って、また帰ってきたら同じ工程踏むとか、毎回は出来ないでしょう？

だから私も時々そのことを忘れる。特にうまくいってる時とかは忘れがち。つい。

そんでまたビーンバチンとかモンゴリアンチョップ喰らう。

でも、マスクと眼鏡。

二人の事を過度に責めるわけにはいかない。

私にとってどちらも大事なのだ。

どちらも必要だ。

その日の夜、寝る前、
「君らがお互いに好き合ってるのはわかるけどさ。でもまあ私の事もさ、土台の事も少しは考えてもらいたい、私っていう土台が無いと君らは存在しえない訳だからね」
枕元に置いたマスクと眼鏡にそんな事を告げて寝た。だってそうだもん、ジンベイザメがあってのコバンザメ。装備者がいてこその装備。済む人がいてこその家。

仲がいいのは結構だ。でもね。そう言う配慮もさ。少しはね。

で、

次の日起きたら、枕元に置いてたマスクと眼鏡が子供産んでた。

マスクと眼鏡が一体となったマスクメガネ。マスメガ。あるいはメガネマスク。メガマス。

そんで当の本人たちはドラクエモンスターズで子供産んだ二人みたいにいなくなってた。