子供の居る風景

夕方に待ち合わせていた友人より
緊急連絡アリ。

旦那さんのお父さん

我が悪友にとっては義父が救急車で運ばれ
ただいま手術中だそうで。

え~、じゃ会食はぁ?

なんて
言うほど私は常識知らずではない。

ここで
問題になったのが
七つになる彼女のお嬢様。

『旦那が帰れなくなっちゃったみたいで!』

自分の父親なのに。

それで私にどうしろ、と?

そもそも
飲み会に来るのにも
お嬢様はどうするつもりだったのか。

『本当は旦那に頼んでたんだけど
こうなるとお隣の方に・・・』

嘘ぉー

今時そんな事あるの?!

私は子供が居ないから判りませんけど
お隣さんだって
別に血縁という訳じゃないでしょ?

そこで預かってくれるの??

三超目の夕日じゃあるまいし。

心配じゃないの??

そこで
友人夫婦協議の結果

それなら
いっそ
マチに預けようぜ!!

と、いう無謀極まりない愚行に出たようで。

たしかに
行く筈であった会食はキャンセルされ
予定はない。

旦那も奥さんもお嬢様も
知っている。

・・・でもね・・・

私、そんな信用の置ける人間じゃないですよ。

少なくとも
私が逆の立場なら
私のような人間に大事な娘を預けようとは
思わない。

と、いう人間性を誇っております。

『ひとまず落ち着きしだい迎えに行くから!』

なんなら
彼女宅で過ごしても。

との事でしたが

私のマンションでお預かりする事に
致しました。

ご飯もお風呂も
人ん家のなんて解らない。

そんな
あっぷあっぷで
小さい子の面倒なんて見れないので。

数時間経ち

そしていま
私の横で
むずがる事もなくスヤァと
寝息を立てております。



『ようこそ私が本当のお母さんです。』

そう
小さな娘を連れて来た友人を前に
ご挨拶したところ

『冗談でもそういう事言わないで!』

キレられました。

余裕ないなぁ。

状況は理解しているので
無理もないですが。

私が不謹慎でした。

申し訳ない。

少しでも
緊張が続きすぎている場が和めば、
と思ったのですが。

しかし
お嬢様は
じいじのピンチにも
まったく狼狽えてなどおらず

私とお絵かきを楽しみ
ご飯をモリモリ食べ
お風呂でキャッキャし
ただいま
私にぽんぽんされ
スヤスヤですけどね。

ここで
不謹慎なのは充分承知の上で
書いてしまいますが

子供

良いですね!!!

凄く可愛い。

返したくない。

とかは言いません。

通報されかねないので。

この子
人見知りしない。

まー、初対面という訳でもありませんが
このマンションに来たのは初めて
なのですけど。

私も思わず
有り合わせではありますが

ホットケーキ

椎茸の海老すり身詰め

お豆腐ハンバーグ茸ソース

という訳の解らぬ組み合わせで
夕食は
お子さまランチ風に
盛り付けてみました。

旗つき。

一階がコンビニなので
そこで
ヤクルト代わりに
黒酢ドリンクの小さなパックも購入し
お皿に乗せてみました。

とても
身体によろしいメニューかと。

子供なんて
椎茸は苦手かな、と思いつつも
モリモリ。

まあ
これもホットケーキミックスの甘い衣で
揚げてみたので
椎茸と気付かなかったのかも。

そして
お子さま大好きお絵かき。

『はなかっぱかいて!』

知らん!!

なにそれ。

検索してみた所
子供番組のキャラクターみたいですね。

『じゃ、すみっこぐらしかいて!』

それも知らん!!

いやなんとなく
響きは聞いた事があるような気もしますが

これも検索。

・・・

・・えー・・

いや、きっと面白いのでしょうけど
私の好みではない。

なに
今の子ってこういうのが好きなの?

児童心理学とは
とても難しい。

とりあえず
ハムスターなの?

ネズミ?

っぽいので

鼠繋がりならば、と
私の十八番(おはこ)

ガンバの冒険キャラを次々と
描きまくり
ちょっとした読み聞かせ風に
おはなし

ノロイも書き加え

この私アレンジし脚色したお話が大好評でした。

『イカサマってなぁに?』

それこそまさしく
得意とする所ではありますが

なんとなく
キチンと説明すると
あとで友人の逆鱗に触れるような
嫌な予感がしたので

会話のさなか
都合が悪くなる度に

尻尾を立てろぉー!!

昔流行った
長袖の片方だけ
片腕を抜き

お尻近くに隠しながら伸ばし

ぴこんぴこんさせるアレを披露して
いました。

この説明で
解ったら大したものです。

理解できた人は
私と同世代ですか。

一時期
子供あいだで
一世を風靡したアクション。

現代っ娘にも大ウケ。

お嬢様は意外や意外

【学者】がお気に召したようで。

私のアクション
コンプレックス気味に立てる短い尻尾と
そのキャラクター性に
とても興味が湧いたようで。

これもあとで
怒られる気がしてなりませんが。

一緒にお風呂に入り
デザートには
リンゴのシャーベット。

なんの事もない
リンゴをサッと煮て
半分凍るか凍らないかくらいの簡単な。

しかし
これも
お嬢様には
目新しいものらしく
モリモリ食べてくれました。

でも
お腹冷やすから
四分の一カットだけね。

お風呂上がりという
タイミングも良かった。

そして
おやすみ中。

いま
私がとても不安なのは

いきなり起き出し

『ママぁー・・』

とかホームシックで
泣き出さないか、

ということ。

とりあえず
今晩はもう
預かるつもりですが

とても怖い。

追記

あのあと
友人が来たのですが

色々と入院等の準備がいるらしく
一晩だけ
お預かり。

お義父さんの容態については
聞きたくなかったので
心配しているフリをしつつ
なるべく聞きませんでした。

こういうと
冷たく聞こえるかもしれませんが

ねえ?

他人が死にそうで苦しんでいる

そんな話を詳しく
根掘り葉掘り聞きたいですか?

私は道路上で起きた事故現場などでも
なるべく急いで
そこから立ち去りたいタイプなので。

わざわざ
首を伸ばして
他所様の不幸を興味津々に覗こう!
とは
ちょっと。

そういう輩には
むしろ
悲惨な現場より
心配を装い
内心笑っているような
その己の下卑た表情を鏡で見せてやりたい。

その上
そういった野次馬根性は
渋滞の原因、
二次的な悲劇にさえも繋がりかねない。

迷惑なんだよ!
やめろ
そういうの!!

醜い。

それでも
手術も成功したようで。

あー、はいはい
そうですか。

お大事にね!

おそらく向こうでは
素っ気なく感じているであろう
そんな私の無愛想は
さういふ考えから
来ているものなのです。

私にしても
死にそうな病人になにかしてあげられる訳でも
ないし。

なら
今から尚も生きていくしかない
人々の役に立ちたい。

私とこうして
小さな手を繋ぐ子供とかの。

私基準による
もはや死に近い所にいる人間より
今からの人間に重きを置く。

まー、それも人に選りますけどね。

うふふ

人間失格でしょ。

実は
これは若くして亡くなり
私の大切であった

とある人間の言葉の受け売り、
なんですけどね。

その人は自分が死ぬ直前まで

お見舞いなどに来るより
その時間を自分の為にこそ使え!

そう私に常々言っていたので。

それを私が曲解しているのかもしれませんが。

それでもその考え方は
私の中に蒔かれた種とした芽吹き
もうガッチリと根付いている。

そして
また実った種子は
こうして
こういった場において
また違う人々へと撒かれる。

弾かれ
腐る種もあれば

中には。

まー、
そんな事はどうでも良かとです。

朝は
○プロテインドリンク
○チンゲン菜のたまごスープ
○バナナ
○またしてもホットケーキ

これらを
モリモリと食べてから
お嬢様は
本当のお母さんに手を引かれ
さきほど去っていきました。

その後
私も
七歳というキーワードを入力し
色々と検索してみたのですが

専門家的意見のひとつに

『七歳は幼児から児童への端境期』

というものが。

こちらが思っているより
かなり深く
物事を理解しているようで。

それなら
キング牧師の演説動画でも
一緒に見れば良かったかな。

私はいま自由なのであろうか

・・・

ではまた。

子供の居る風景

子供の居る風景

追記しました。

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-16

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