やがてつめたい

やがてつめたい

夕方、目頭はじんと熱くなって、ぼくの高校時代はくずみたいだったと、一人きりの報告をした、SNSが発展してくれたおかげで、いつでも写真を共有できる、いつかスマホと一体化してサイパンとかに行ってみたい。
そういう夕方でした。
塾帰りの学生たちはみな夜空を見上げる。宇宙をなめてるんだと思う。ぼくらのこの貴き心音を知らず、どこか遠くに、静寂とつめたいだけが展開されていることを想像しても、想像しきれないよ。あなたは星を見ている、星はあなたを見ていない。もし仮にぼくらが死後恒星になるというなら、やがてつめたい、絶叫をする。青白い星の方が表面温度は高いらしい。
塾帰りの学生たちはどう考えても不死だね、中間と期末の間を一本の線でつなぎ、LINEにする。やがてつめたくなることしかできないぼくの、中途半端な大声がまた宇宙に吸収された。地球温暖化が叫ばれてもう数十年がたちます。青くてきれいな地球はもう汚れ切っていた。ぼくが生まれたときにはもう手遅れで、ぼくは無責任かつ軽薄な涙を流す。なにもない、きれいなものはなにもない。とうといものもなくなりつつあって、最後にのこったものは貴いぼくの心音だけ。

やがてつめたい

やがてつめたい

塾帰りの学生たちはみな夜空を見上げる。宇宙をなめてるんだと思う。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-16

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