渚について
渚について
僕が渚に行くと、きまって彼がいた。そしてなぜかいつも空は曇っていて、たいして暑くもない日ばかりだった。正直、うんざりしていた。
「教養人だ、インテリゲンチャだ、はるか西の方へ追放しろ。けだものめ、銀色の魚といっしょに攪拌されてばらばらにとけてしまえ。のろいをやつの背中に縫い付けて、軍勢よ、ものども、貴様らはそのまま地獄行き。もう息などひそめてしまえ後悔するほどにひそめてしまえ」おそろしいほど現実から乖離した数学の教科書のリアリティに目をぱちっと光らせろ。僕はかなしい。かなしいなぁ……。すでに意識は乾燥していた。それでもって、一般論へと展開される。
2000年後。
消失点はもう消失してしまった、あとに残されたのは渚だけだったから僕の居場所は渚になった。僕の体もはんぶんはぐちゃぐちゃな吐瀉物にされたようです。渚にはまだ彼がいた。聖書を読んで暗唱していた。僕は聖書を知らない。だから聖書はモチーフでしかない。彼は聖書から顔を上げて笑った。箴言の一説を暗唱して、そいつをシリングとペンスに変換して、眠った。
渚について