晩秋のジャスミンの濃縮缶

もう冬ですか?秋は?

今年の夏はジャスミンの濃縮缶にお世話になった。とてもお世話になった。ここでお話にもしたし。そういう意味でもとてもお世話になったなあと思う。はじめは麦茶(伊藤園かサントリーかはその時の気分によって)、ダカラの濃縮缶、楽天で買った水出しコーヒーで行くつもりだったのだけど、ネットで調べてみたらジャスミンティーもあって、だからそれも急遽メンバーに入れた。ジャスミンティーなんて存在がもう深窓のお嬢様みたいな感じがあるけど、でも殿に急遽入れたことが私としても気後れを無くしたように思う。どれかは減らないんじゃないか、逆にどれかを贔屓してしまうんじゃないかと思っていたけどそういう事も無く、ジャスミンティーも他の三者と同様お世話になった。バランスが良かったのかもしれない。来年は麦茶に一つまみ塩でも入れてみようかと考えている。

で、夏は終わり十月になると暑さも収まって秋が来た。秋が来たかと思ったら何か寒いくらいの気温になった。
「秋こら!」
って思うほど、ついこないだまでは17時くらいまで明るかったのに暗くなったし、朝も5時になったら明るかったのに暗くなった。そんでやっぱり寒くなった。

あっという間に晩秋のような感じになった。もっとも昨今10月の中旬とかでもいきなり夏の陽気みたいな事もあるから、まだ油断は出来ないけど、でもこないだまでクーラーを一日中つけていたのにそれがもう嘘みたいになった。

そんなある日、冷蔵庫を開けたらジャスミンの濃縮缶が一本残っているのを見つけた。
「あー」
実際は見つけたとかそういうのじゃない。前から知ってた。あるのわかってた。忘れるわけない。なんとなくこう、最後のそれっていうのがね。飲めないでいた。

最後になって急に他と違って遠慮が出たような。人見知りしたような。
「君だけ話に書いたっていうのもあってなあ」
当然ジャスミンの濃縮缶の事だけ話にしたっていうのも影響していると思われる。しかもあまり上品な内容でもない。
「私みたいなのは全員フィルターを通したら、自分の都合のいい世界が脳内に展開されるんだよ」
みたいな内容で、そんな話で俎上にあげられたのがジャスミンの濃縮缶。その結果愛着が生まれた。それが高じて愛が過ぎてゆがむみたいになった。
んで、
「飲めないんだよなあ」
なんとなく。殺人鬼が死んだ人間の一部を切り取ってコレクションするみたいにしちゃってるなあ。

でも、それはよくない。お互いの為によくない。

10月も中旬に入ってようやくそれに気が付いた。

確かにジャスミンは麦茶やダカラと違って近所のファミマには売ってない。ダイエーに行かないと売ってない。他に比べて購入に苦労することが自分の中で高尚な感じをもたらしているのかもしれない。でも、何にせよ飲まないでいるのは失礼だ。ずっと来年まで冷蔵庫に入れておくのか?体の一部を冷蔵庫に入れてるシリアルキラーか。

飲め。

もう飲め。

来年になったらまた買ってこい。

そう決意して、ジャスミンの濃縮缶を取り出して眺めていると、裏面に牛乳で割ってもおいしいよ。っていう記載があった。

「あ、そうなの?」
それまで裏面を見たことなかった。

ずっと無印で買った横置きも出来る2リットルの容器にぶち込んで水2リットル入れて冷蔵庫で冷やして飲んでた。

「・・・それにしようかな」
今年最後のジャスミンの濃縮缶。

今まで考えもしなかった特別な方法でいただく。

「特別性」
そのスペシャル感。

最後のジャースーにふさわしいんじゃないか。

あと、Googleせんせーに、ジャスミンティー、牛乳って入れたら、
『面倒なんで牛乳パックに直接ジャスミンティーのディーバッグ入れました』
っていうのが出てきて、おいしいって書いてあったので、
「これにします」
それを採用した。

という訳で、近所のファミマに牛乳買いに行った。

普段牛乳なんて飲まない。

でも、今回は特別。

あと、スーパーとかに行って買った方がお安いんでしょうけど、朝五時だったから。それに朝五時とかにそういう事を考えるタイプだから私。そういう生き物だから私。これの一個前の話でもそうだったでしょう?

財布と鍵をもってファミマに行った。
「あった」
そんでファミマで牛乳を見つけて、見つけた瞬間うれしくなって、
「あ、マイバック忘れた」
ってなった。

いや手で、手でもっていけばいいじゃん。うん。手で。牛乳一本じゃん。誰も見てないし。別に見られたところで恥ずかしい事なんてないし。うん。大丈夫だって。子供の頃はよくそういうのもやってたし。

という訳で、そういうことを考えながら牛乳を手にもってレジに持って行って、購入した。

袋はいりませんって言った。

家近くだし。大丈夫。全然大丈夫。

で、家に帰りついたらさっそくジャスミンティー開けて、
「あ、でも、これこのままだとちょっと入らないか」
って牛乳も開けて、ちょっと飲んだ方がいいなって思って、

そのまま口付けて飲んだ。
「甘酸っぱい」
え?なんで?

飲むヨーグルト買ってた。

くそ野郎!さっきと同じ話じゃねえかこれ。朝カレーと同じじゃねえかこれおい!

ちなみにかぶったついでにぶっちゃけるけど、これは一昨日の話。台風14号接近日の話。カレーは更にその前日の話。台風14号がいよいよ来るっていう日の話。んで、どっちも雨降ってたけど、こっちも雨降らせるとまるまんま一緒になるから雨の部分は割愛しました。

とにかくジャスミンティー今夏は本当にありがとう。ありがとうございます。

晩秋のジャスミンの濃縮缶

晩秋のジャスミンの濃縮缶

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-12

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