マジシャン

バスで乗り合わせたのは
マジシャンだった
ただの紙を
お金に変えた
ひもの縄目を
あっさり解いた

それから
赤紫色のハンカチーフを取り出して
ふらふらと揺らした
丸めてもむと
ブーケが現れた

私は渡されて
ぎこちなく笑う
マジシャンはおじいさんで
ハンカチーフとブーケの
鮮やかさと対照的な
ベージュ色の姿だった

私は色の鮮やかさに目を伏せる
見てはいけない
内側に触れたようで
見つけて欲しくない
私の内側を
見つけられたようで

マジシャンのおじいさんは
あっさり下車する

ブーケを抱えた私は
泣きそうになって見送った

マジシャン

マジシャン

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-12

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