散々な散文
散々な散文
聴こえなかった、都会では。
児童のはしゃぐ声が。
虫の音が、恋の歌が。
昼夜問わず、アスファルトの上を車のタイヤの擦る音が。
アクセルを踏むことで唸りがなるエンジン音が。
歩いて五分の線路を在来線と新幹線の、レールを軋ませ走る音が。
観えやしなかった、どうしたって。
真っ暗でだだっ広い夜空に瞬く星々に満月。
三百六十度パノラマ、大中小の青き山々。
家々の塀を様々な蔦が絡み上る様。
空き家を移動するハクビシンの光る眼。
ネズミが屋根裏バタバタ、トタン屋根、カラスがドタドタ。
裏の畑にはアオダイショウ。
都落ちで耳と眼が野生に還った、気がする。
散々な散文