わたしたちの国
ふたりは結託していた
それはふたりの世界では最も美しい結託だった
演じていることを忘れてしまうと
演じているうちにそれは現実に
そして真実になる
ふたりは時につまらない諍いをし
つまらないことでいつまでも笑い合い
つまらないことでいつまでも泣き合い
身を寄せ合い 固く手を握り
誓いの黙祷をし 力いっぱい抱きしめ合った
互いの体温をよすがに眠っていた
自分の体温さえ分からなくなるほどに
そこは聖域だった
誰にも穢されるべきでない聖域だった
人知れず ふたりだけの世界を築いていた
その世界の外の人間には風景の一部に過ぎない物も
ふたりにとってはかけがえのない出来事として
いつまでも輝きつづけていた
わたしたちの国