砂糖とミルク
高校に入学するまえの春休みの
まださむい 晴れた日の七里ヶ浜で
わたしのやさしくて聡明で
悪夢障害のオーレリアンは
昨夜みた夢と好きな花と
いままでの人生でいちばん
うつくしかったときのはなしをしてくれました
十五歳のわたしはいまも
記憶のなかの海辺を歩いていますが
夕日もうすもも色の日々も
こころのなかのさびついた鉄球も
海には沈んでくれません
思い出してください
ずっと昔
紅茶に砂糖とミルクを
たっぷりといれていたころ
わたしたちは波のまにまにただよう
ひかりの蝶でした
砂糖とミルク