ゆるやかに指をとく
むずかしいことを理解するために、なんだか、どんどんじぶんがむずかしくなってゆく。がちゃがちゃとこんがらがって、じぶんのことがわからなくなってゆくのに、他人、であるきみのこと、わかろうとしたって無駄だった。理想を押しつけるなんて最低、押しつけられるのもいや、できてるって、思いこんでいるだけ。
懺悔。新月の夜に、ゆびを、きつく結んで。
気づいたら、なにかをねがっている。きみに。なにも、押しつけたくないのに。
「でもなにもねがわれないなんてさびしいよ」
こうやって、あまやかさせるじぶんが、またちょっといやになりながらも、しあわせだと感じている。
「きみの矛盾ごとすきだっていっても、きみの悩みをふやすだけだものなあ」
どこまで、どれまで、その正体を、にせものか、ほんものか、考えてもわからないのだ。疑念ではない、これは疑問。こたえは、にんげんであるかぎり、得られない。魂って、こころと、イコールってわけじゃない。
とりあえず、まるごと、きみそのものを信じようときめた。きみはとっくに、そうしているようだった。
平行線上を、あるきながら、手をつなごうとする夢をみたとき、きみが手をとって起こしてくれた。手が届くように線を引けばいいんだと、両手をとってくれた。秋がカーテンを揺らしている。陽射しがやわらかくなって、ぼくよりはやく起きて寝顔をながめることが日課の、ひるねをするきみのまぶたにうまれる、レースカーテンの模様をながめるのが、ぼくの日課。
ゆるやかに指をとく