花が散らないために

けさ
目がさめると
月の色に咲いていた
芙蓉は一日花

花がぼうっと桃色に染まる頃
彼らは夢をみる
どこにも行けない彼らのために
神さまがくれた
蝶の夢を

やさしくしたり
怒ったり嘆いたり
雨も風も止めてみたり
世界中の本から「死」という言葉を消してみたり
どれだけお酒を飲んでも
どれだけ絶望しても
どれだけお祈りしても

芙蓉の花は落ちる
わたしだけに見守られながら
九月の
雨降る庭から
あたたかい夢の世界へ

花が散らないために

花が散らないために

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-26

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