血のモンスーン

季節は変わった。もう冬だ。春夏秋冬、なぜ日本は四季があるのだろう?

その疑問はモンスーンがどうのこうのという科学的なものではなくて、四季が存在しなければならなかった意味を、見いだしたいというような欲求だ。

11月××日。今日も寒い日が続く。俺は何とも言えないその寒さに、いい年してフリーターやってる自分の境遇の切なさを重ねていた。

俺の仕事はピザの宅配。注文が入れば当然、即座にその家に向かう。11月ともなれば、手袋は必須アイテム。気分が何となくイライラしていた俺は、つんざく冷気の中を、原チャリでぶっ飛ばした。

"ピンポーン"

あれ?誰も出てこないな?この家に間違いないのに……。俺はもう一度インターホンを鳴らしたが、家の中は無音だ。部屋の明かりは着いてるのに??ドアをノックしたが出てこない。そういえばここは前も来たな、20代前半位の女性の、たぶん一人暮らしだ。ピザを頼んでおいて部屋の明かりも着いてるのに出てこない??

なんだか唯ならぬ気配を感じた俺は、ドアノブに手を掛けた。案の定ドアは開いていた。なんと、中には廊下に血だらけになって倒れているその女性がいるではないか!!僕は即座に血の出ているのはリストカットのせいだと確認し、持っていた手拭いで手首の止血をして、救急車をよんだ。救急車は10分位で来た。

幸い彼女は一命をとりとめた。

彼女は後にこう言っていた。
「生きている実感が欲しかったんです。」

12月になった。寒さは更に厳しくなったが、俺は生きている実感を強く、喜ばしく感じ、自分の仕事に没頭していた……。

血のモンスーン

書いていて命を大切にしなければと、当然の事を考えてしまいました。

血のモンスーン

  • 小説
  • 掌編
  • 成人向け
更新日
登録日
2012-11-15

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