異聞カムイの儚総集編
異聞 カムイの儚 総集編
-和市郎-
敗戦間もない首府の闇市で、トキと和市郎はふとした機会で出会った。トキは四〇である。
和市郎はシラオイアイヌの出で海軍中尉にまで上り詰めた異端で、この時、三〇歳。あの渋谷の任侠、青柳の舎弟分となっていた。
稀に見る秀才だったが極貧の母子家庭に育った和市朗は、生地のある退役軍人の援助で、一五で陸軍少年兵学校に入学。陸軍大学を卒業すると大陸の戦線に赴任して、国の諜報組織の『コダマ機関』と内通した。敗戦の直前に、コダマ機関が隠匿していた二億相当のダイヤをくすねて、民よりも早く一目散に逃げ帰ったのである。
青柳と出会った和市郎は、既に母も退役軍人の恩人も逝去していたから帰省する理由もなく故郷を捨てた。 和市朗と北大の研究者、アイヌのあの青子(『異人の儚』で伊達の愛人)は同郷で幼馴染みである。
トキと出会った和市郎はその夜のうちにトキの家に同衾した。和市朗は青柳の元で不動産業に辣腕を発揮して、たちまちのうちに独立したのである。
トキは表向きは小料理屋だが実質は売春宿を営んでいて和市郎を助けたが、やがて和市郎が成功するとある謎の女に譲った。
だが、和市郎は六年後に突然に死去した。車に跳ねられた事故死である。加害者は逮捕されたが微罪であった。コダマ機関が関与していたのではないかと疑った者がいた。青柳である。田山に通報した。
トキには莫大な遺産が残された。そして、トキは和市郎の生前から、草也が通う昭和学園の理事長の有栖川との姦通を続けていたのであった。
有栖川は皇族の末席に名を連ねる元華族である。戦争中は大本営参謀だった。
-黒幕-
三年前の盛夏の待ち合い。
ウィスキーをあおる廣山の股間を、熟しきった桃の様なトキがいとおしそうに弄んでいる。演技とも思えない痴態だ。湯を浴びたばかりの女の浴衣は乱れて、殆んど半裸に近い。豊かな尻が剥き出しなのは廣山の露悪な性向だ。女が顔をあげて濡れた唇を舐めた。「あの土地が本当にそんな値段で手に入るの?」「俺がそうさせるんだ」
北の国の選挙区の総統候補、廣山大蔵大臣は反田山派で日本協議会の幹部である。日本協議会は初代草也を謀殺した尊皇右翼組織だ。
廣山はマツカワ事件に関与していた。占領軍の秘密組織『WW』のスミス大尉や右翼のコダマは盟友だ。
「凄い力なのね?」「改めて感服するわ」廣山は口移しでトキにウィスキーを含ませた。トキの口からこぼれた放埒な遊戯は豊かな胸元に流れた。
トキは有栖川の依頼を受けて、廣山をまんまと籠絡したのであった。
-疑獄-
草也が昭和学園の高校三年の初夏に、ある事件をきっかけに学園と有栖川理事長の不祥事が発覚したのである。
府内のその国有地は、戦争中はあるガス会社の廃棄物備蓄施設だった。戦後に駐留軍に接収されたが、ある事情ですぐに国有化されて大蔵省が管理していた。
廣山と有栖川が謀議してこの土地の払い下げを企んだのであった。目をつけたのが地下埋設物の撤去費用だった。
一〇〇億の地価から廃棄物撤去費を九〇億として、一〇億で有栖川の学園に売却したのである。
有栖川は通常の地価の一〇〇億で、『聖十字病院』に転売して、濡れ手に粟で九〇億の利益を得たのであった。
新設されたこの『聖十字病院』は、豪腕でワンマンの小沼が理事長兼院長である。
小沼は元陸軍細菌研究所副所長だったが駐留軍と取引して、細菌兵器の開発データを渡して無罪放免になっていた。
この土地に地下三階地上一〇階の病院を建設したのである。 地下の埋設物は放置した。資金の調達は廣山が公営金融機関に話を通した。
-湖池-
府知事選の演説会壇上に候補者の湖池と田山大蔵政務次官が同席していた。 前座で若い区議が応援演説をしていて、会場が沸き返っている。その情景には全く無頓着な二人が、視線は場内を見回しながら、声を潜めて平然と話し込んでいる。
前府知事が収賄疑獄で失脚して、突如の府知事選になったのである。与党が割れて、いち早く反主流派の湖池が出馬を表明した。国有地払い下げ問題の再調査を公約の第一に掲げたから、府民は喝采し政界に激震が走った。背後には田山がいる。総統派からは益田、野党は鶏超が出馬していた。
湖池ユリ子(コイケユリコ)は早くからその妖艶な美貌と辣腕で聞こえた前大蔵官僚である。大臣との艶聞が報じられたのも二度や三度ではない。四三歳。反総理派だが田山派にも一定の距離を保っている。女の湖池にとってはその方が政治的利益があるのだった。だが、廣山の女ではないかというと噂もあった。当然、廣山が支配する極右皇道団体の日本協議会のメンバーである。
「その話、本当なの?」「間抜けな官僚が出世話に飛び付いて白状したんだから、間違いない」「凄い爆弾だわね?」「何せ、総統夫人の姦通だからな。それに政財界への浸透を画策しているある新興宗教が絡んでいる。あの国有地払い下げ疑惑をしのぐヒロシマ級の爆弾だな。あいつらの天下ももう終わりだ。この選挙も一挙に形勢逆転だ」「勝てるの?」「間違いない」「私は府知事になれるのね?」「俺に任せろ」「興奮するわ」「やりたくなったか?」「濡れてるもの」と、田山の耳元で、「見せたいわ」股間に手を伸ばす。演壇の長椅子は白い布で覆われているから、二人の下半身は聴衆からすっかり隠れているのだ。
若い弁士の熱い訴えに応えて、満場の支持者の拍手がさらに激しく鳴り響いた。
「今すぐ抱かれたいわ」女の指は田山の股間をまさぐり続ける。「演説が済んだら『火乃屋』で大臣と会う約束だ。一〇時に来い」「それまで我慢できないわ。次の街宣まで三〇分空いてるの。なんとかならないの?」「一〇分位なら」「それで十分よ」「どこで?」「そうね。あなたの事務所は、どう?あそこなら、どっちも通り道だわ」「そうだな」
若い区議の演説が終わって田山が演壇に進んだ。
-官僚の女-
その一月前。「あぁっ」挿入の瞬間、大蔵官僚の女が顔を歪め自らの甲を強く咬んだ。府心の料亭の奥まった一室で政治の闇が交接をしているのだ。
一九××年の盛夏。狂ったほどに蒸し暑い昼下がりだ。
「一億ある」男が傍らの紙袋に視線を流した。「本当にありがとうございます」正座した女がうやうやしく浴衣の体を折った。湯あみしてまだ髪が乾ききっていない。半身を起こして男を凝視した。女と男の視線が互いの思惑を秘めて淫湿に絡み合う。
男は田山栄山。裏列島選出の代議士だ。与党副幹事長。三五歳。まだ少数ではあったが同志を糾合して派閥を形成しつつある。
ドングリ顔。薄い髪。大きく鋭い目。巨根を連想させる鼻。厚い唇。精悍な男である。
ダミ声が、「緊急の決断をしてもらった」「礼を言わなきゃならんのは俺の方だ」「全面支援する」「あなたも精根込めて頑張ってもらわんとな」と、女を舐め回した。
女は府知事選の出馬を決断した湖池である。府大卒の財務省局長で四三歳だ。
田山はしわがれた咳払いをすると、「せっかちでな」と、女を急かした。
官界一の美貌だと言われる菩薩顔の女は妖艶に、しかし、ぎこちなく笑むと、立ち上がってするすると浴衣を払い捨てた。下着を着けていない。「ほう」と、田山が息を吐く。着痩せする女だと思った。「府大出の女か」ウィスキーをグビリと流し込んだ。
田山は寒村の小作農の出で国民学校止まりだ。府大出の女などはさらさら無縁の存在だった。議員になってからは会う機会もあったが学歴コンプレックスもあり女として意識した事などはなかった。その女が、いま真裸で異様な風景を作ろうとしているのだ。田山を不可思議な快感が襲っていた。
田山に命じられるままに、女がたった今、田山から渡された紙袋から紙幣を取り出して、座卓に敷き始めた。四〇過ぎだと聞いた豊かな尻が淫靡に揺れる。乳房も放埒だ。
びっしりと敷き詰め終わると、女が仰向けに横たわり足を開いた。田山の視線が鋭角になった。
-農子-
昭和学園の関係者が『真相解明委員会』を結成して有栖川と交渉したが、一向にらちが明かない。遂に、一部の進歩勢力が労働組合を結成した。上部団体から派遣された役員が農子である。草也は新聞部の部長だ。草也に農子から声がかかった。
トキは倫宗の熱心な信徒であり、この頃、初代草也と男女の関係が一度だけあった。
トキの死後。草也は新理事長の浅池に進路を相談した。浅池は革新党の元幹事長である。ある指針を得て迷わず、あの戦争の戦勝国に決めた。
-トキ-
トキは一九〇五年に北の国の最南端に生まれた。地主の末娘で、草也の祖父の年の離れた妹、すなわち大伯母である。
女学校から首府の女子大に進んだ。卒業すると出版社に勤務した。
二年後に同郷の青年将校と見合いをして、求められるままに結婚をした。夫の高張は長く皇室警護部隊に配属されて、有栖川の直属の部下であった。
一九三七年の二二八事件で、高張は反乱軍の中心人物の一人だった。投降を説得しに来た上官と激論の果てに、上官に切りつけて射殺されたのである。遺体は塵屑の有り様で帰宅した。この時、高張三五歳。トキは三二歳。有栖川は四六。
-皇室の密教・陰陽経-
その通夜の夜半に有栖川の読経が低く怪しく渦巻いている。 皇族の間に極秘に伝わる皇室の密教、陰陽経の経典だ。有栖川は今上御門の又再従兄弟である。
有栖川の読経の呪文に包まれながら、トキは幼い時に歌った手まり歌を口ずさんでいた。そして、意識が次第に遠退いていった。
-いろは手まり歌-
空。ああ、蒼い。いっそう、うんと。えぇ、恐ろしいほどに碧い青い。そう言ったら、嘘みたいだけど。絵の具で描いたお話みたいな霞み。きっと、狂気を、狂った劇場に怪訝な言葉を差配している仕組みなのかしら。すっかり澄んで。清々として静粛。そして爽快。それは、ただ血ぬられたばかりの終の御門に問う難詰なのかしら。にわかに鵺が鼠を呑んで、羽ばたけば広がる風情。翩翻と帆。待つのは醜い陸奥の女なの。桃の破れ。夢見心地。蘇る裸。裏面に瑠璃の冷淡な牢獄。わあっ。ん?
一九三七年の盛夏の満月である。首府の閑静な一角。
敷布団に長襦袢だけを纏った水蜜桃の様な肢体のトキが仰臥して、甘く柔らかい寝息を湿った闇に漂わせている。
月の光だけを受けて、単衣をはだけられた股間があられもなく照らし出されていた。両の太股が微かに開き、豊かに盛り上がった丘を漆黒の繁みが覆っている。
昨日、後家にになったばかりの、信頼する部下の貞淑な妻だった女は、本当に気絶しているのか。有栖川は不可思議な悦びに酔いながらも半信半疑だ。
二人きりの通夜の晩に、女は突然に気絶したのである。それから一時間も目を醒まさないのだ。女の寝息は静まる闇に安らかに溶けて、熟睡しているとしか見えない。
しかし、或いは女はとうに覚醒していて、男の卑猥な所業を黙認しながらも、真から侮蔑しているのではないか。そうも考えると男はそら恐ろしくもなる。だが、男はたぎってしまった暴走をもはや押し止められないのである。
トキは砂漠の水の全てを吸いとって咲く花の如くに絢爛な女だ。口角が尖った唇は紅く湿って、こぼれる歯は真っ白だ。肩まで伸びた烏色の髪。富士額、三日月眉。まつ毛は濡れ大きな目。座り心地の良い鼻に湿りが浮く。豊かな耳朶。膨らんだ頬。菩薩顔。しっかりした首すじとうなじ。麗しい声。中背。ふくよかな肉つき。ふっくらと張った腹。釣り鐘の乳房と桃色の乳首。豊かな太股。油をひいた様に艶めく肌。豊穣な丸く桃色の尻。潤沢な肢体は豊潤で頑健だ。農婦の如くに健康だ。しかし漂わせる気品は、居住まいも立ち振舞いも辺りを圧倒するのである。平素の所作も華族の因習を完璧に習熟している。閨房の女も平生と変わらずに淑やかさを決して崩さないだろう、と思った。
トキは薄目を開けて全てを見ていた。トキにとって、有栖川などはいかに皇族とはいえ、愚かな男の一人に過ぎないのである。
-華子-
トキとの秘め事は有栖川の妻に発覚した。華子といい皇族である。幼い時に今上御門と交接した女だ。
しかし、有栖川とトキはその後も時おり密会をしていた。
一九四五年八月一五日、戦争が終わった。トキは敗けるとは思っていたが、いざ現実になると玉音を聞き泣き崩れた。有栖川はその痙攣する尻を茫然と眺めている。
御門は人間宣言をした。
-農夫 -
「終戦の前の年の食糧も尽きた時に買い出しに行って。そうよ。わずかな食料と引き換えに理不尽に犯された女の話よ」「女は高貴な出で男爵家の妹なのよ。男は農家の卑猥な年寄りだわ」「堪らずに女は奈落に沈んでいくの。売春婦に転落して。終には売春宿の女将になるのよ。あの戦争が故の破廉恥で不条理な話なのよ」「聞きたい?じゃあ、始めるわね」と、トキの店の謎の客、美都子が話し始めた。相手は、誰あろう、トキの夫、あの和市郎なのである。
この時、トキは三九。あの戦争の終末が近い夏の盛りの真昼。狂った様に、残酷なほどに暑い日なのであった。
トキが食料を求めて初めての買い出しに出た。辺鄙な村をさんざんに訪ね歩いても、どこでも相手にはされないのであった。
ある農家の庭先に汗まみれで辿り着くと、農夫が筵の上で大量の大豆を選り分けていた。六〇近くに見えた。
裸の上半身が汗で濡れている。日に焼けて赤銅色の筋肉が盛り上がって逞しい。
トキが、「食べ物を譲って欲しい」と、頼むと、いかにも湿った眼差しで女の身体をねっとりと舐め回して手招きした。にじり寄った女に声を潜めて、「ここにはこのように豆も、米も野菜もしこたまあるが…」と、言って、「おめらの持ってくる訳のわかんねような着物や道具なんて。おら、要らねんだ」「山ん中の百姓にはそだもの、何の益にもたたねんだ」「だが、俺の気に入ったものだったら欲しい」と、女の目の奥を覗き込んで、「わかるべ?」
「お前はいい女そうだから、って。それでもいいか、って」「女が大きな瞳を開いて。男を睨み付けたまま黙ってると。格好つけんでいい。背に腹は変えられんだろ?何人もそうしてるって、言うの」と、美都子は媚びた声音で語り続けるのである。
-飢餓-
「つい最近までは水飲み百姓って、散々にバカにされてたが。戦争も地獄の有り様を呈すると、世の中、いきなり様変わりだ」「先ずは生きなきゃなんね、食わなきゃなんね。物や金なんて何の役にもたたね。何事にも代えがたいのは食い物だ」「そうだっぺ?」「国なんてあっという間に無くなったも同然だ。食い物を作ってる百姓が、いきなり御門様になったようなもんだ」「毎日、町の女がやって来る。身体を差し出しても食い物が欲しいんだ」「お陰様で俺みたいな年寄りだって、女遊びにゃ不自由はしてね」「選り取りみどりだ」「嫌ならいいんだ。帰れ」
他に行く宛とてないトキはやむを得ずに頭を垂れた。万策つきていたし、疲労困憊して、何よりも空腹で、追い討ちをかけて目が眩む暑さだったのである。
「歳はいくつだ?」トキが五つもごまかして三四だと言うと、男が唇を舐めながら、「亭主はいるのか?」と、聞く。「軍人の夫は戦死した」と、言うと「何年、やってねんだ?」女はひるんだが、「三年」と、唾を呑んだ。「し盛りだな。やりたかったろ?」「その身体だ。疼いてもて余しただろ?」女が黙っていると、男が目を尖らせて、「おまんこ、やらせんのか、やらせねのか、はっきり言え」
女は紅い唇を舐めながら、「言う通りにしますから、必ず食べ物を分けてください」と、哀願したのである。
満足した男が、「ここではまずい。奥には家族がいるんだ」「こっからしばらく行くと小さな祠があるから、そこで待ってろ」「昼飯は食ったのか?」タキ頭を振ると、「握り飯も持ってってやっから」
-漬物-
暫く歩くと寂れた神社があった。朱もところどころが剥げた鳥居の脇に、裏山から流れ落ちる細い滝があって、女はその清水で喉を潤した。漸く一息ついて、これからあの男に身を任せるのかと思うと、汗だらけの身体がいとおしく思えてならない。
やがて、篭に大豆や米、じゃがいも、さつまいも、ニンジンなどを詰め込んだ男がやって来て、「どうだ、凄いだろ?欲しいか?」女が、「何でもしますから譲って下さい」と、懇請すると、男が喜んで、「握り飯を食え。女房の目を盗んで俺が握ったんだ」
女は大きな握り飯を頬張りながら、何故かも知らずに涙が溢れてきた。嬉しいからなのか、悔しいからなのか、或いは他の訳なのか、皆目わからないのである。男は嬉し涙だと思い込んで、「漬け物も食え」と、最早、自分の女の如くに情けをかける。
女が茄子やキュウリの漬け物を噛むのを見ながら、男が、「会った時から、そのでっかい尻が揺れるのを見てたら…」と、喉をならして、「そのおっぱいも。わざと揺すってたのか?」「その身体を見てたら、やりたくて我慢できねくなった」「飢えて買い出しに来た身体とは、とても思えね」「なんでそんなに肉付きがいいんだ?」「なんでそんなに色っぽいんだ?」
トキが買い出しに来た訳を言うのである。「夫が戦死しても、自分は独り暮らしだからなんとか配給で凌いでいる」「買い出しに来たのは、親しくしている家が、やはり、戦争未亡人で子沢山で…」「産めよ増やせよの国の政策で、産んだわいいけど、召集された良人がすぐに戦死して暮らしに困っている」
トキの話は飢餓以外は殆どが嘘なのである。気難しそうな男の機嫌を損ねまいと必死なのだ。或いは、元来がこの女は虚偽に満ちているのか。「だから、どうしても食べ物がいるんです。お願いですから譲って下さい」「私に出来ることなら何でもしますから」と、意味ありげに懇願するのであった。男はもう自分のものになったつもりで大満足なのだ。
「食料は命の源だ」「それを作っている俺は創造の主じゃないか?」女が頷いた。「口からは食い物を入れる。おまんこのには金たまを入れる。身体の中で、異物を、命を取り入れるのは、口とおまんこだ」「食うのとやるのは、よく似ているんだ」「お前の口は、おまんこにそっくりだ。ねっからのやりたがりの口なんだ」
美都子の息が熱い。「舐めんのが大好きな口だって。旦那のをさんざん舐めたんだろって、言うのよ。試しに茄子を舐めてみろって」
(続く)
異聞カムイの儚総集編