あした君は星になる
猫が鳴いたら記憶の淵から雪のように白い手が現れて首を絞められる夢を見るようになってから七日目の朝に君が星の苗床に選ばれた。腐りかけた星を浄化するために選ばれた人間は再生の糧となるべくその命を燃やさなくてはいけないなんて馬鹿げた御伽噺だと思っていたのだが。星に選ばれた人間だけが受け取る血で染めたみたいな赤い手紙を持って君は笑いながら泣いていた。
「この星に選ばれたなんて光栄だ」
そんな作為的な科白を呟く君に僕は酷く暴力的な気持ちを抱いたけれど小刻みに震える唇が愛おしくてすぐにかなぐり捨てた。街の灯りが濁って見えるのは腐食のせいである。夜空の星は美しいのだけれどきっとおそらく宇宙から眺めるこの星は鈍い光を滲ませているのだろうと想像する。生まれてから死ぬまで一生きれいなままでいられるものというのは稀有で星もそうで生命体も変わらず清らかさを湛えている方が気味が悪い。君も。にせものの美しさは何よりも怖かったし醜く歪んでゆくものからは生を感じるので安心した。
あした君は星になる