融 合

あおい はる

 沼に嵌る感覚とはこういう感じだろうかと虚ろな頭で指を一本ずつ動かしてみる。全体的に鈍い。氷河期に突入した現代は僅かでも気を抜けば凍え死んでしまいそうなほどの寒さにあらゆる機関が麻痺している。生命体の衰えは著しく星もやがては果ててゆくのだろうと想像する時間を持て余している僕と君が観ているテレビのなかでは美味しい目玉焼きの焼き方という興味深いようでどうでもよさげな内容の番組が流れていた。接吻という行為は神性に等しいと思っていた君の思考が盛大に歪んだ日に僕のからだには真っ赤な薔薇が咲いて僕らはひとつのいきものとして生まれ変わったのだと覚った。爪の先に宿る熱が君だけを求めて触れると心臓がそこに移動したかのように荒々しく皮膚を内側から叩く。肉体は引き裂かれても精神は繋がっているのだと割とよくある教えの類に心酔しているわけではなかったが肉体も精神も融合したのだと信じていれば孕むはずのない小さな息吹を腹部に感じて君のことをますます愛おしく思った。

融 合

融 合

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-09-13

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND