終焉と黎明の星王 舞台設定

とある世界の、とある王国の物語。

創世記

遠い昔、海の上に三つの大いなる存在が降り立った。星と共に歌う者たち、神と呼ばれる者である

三柱の神のうち、『アイ』と呼ばれた者は、その肉体を海に横たわらせ、大陸になった。
残りの『リーン』と呼ばれた者、『リディア』と呼ばれた者は、その大陸の上で歌い、命を創り出した。木々、虫、獣たち……そして最後に、二柱は自らに姿を似せた存在を創り。大地へ放った。二つの人間……知恵の民『イル・リーン』、力の民『イル・リディア』である。

『リーン』と『リディア』は、自らに姿を似せて作った人間たちのうち、『イル・リーン』に星と歌い力を得る魔法を、『イル・リディア』に頑強な獣の姿をしたもう一つの身体を与え、『アイ』の肉体である大陸の上で眠りについた。

これが、物語の舞台となる、神の歌で生まれた大陸『ハルモニア』の物語である。

ユスティーア王国と二つの国

その後、種族の違いから時に争い時に手を組みながらも発展をした『イル・リーン』と『イル・リディア』は、三つの勢力に分かれた。最も神の力を濃く受け継いだ『ユスティーア』を初代国王とする、大陸の南半分を占める『ユスティーア王国』と、そこから内紛により分かたれた二つの国。イル・リディアが国民のほとんどを占める北の『アーシェス王国』と、西を占めるイル・リーンの貴族たちの国『ムーヌ公国』である。


ユスティーア王家は999年もの間、王国を治めた。そして神より授かった力を用いて、ある魔術を編み出した。
それは、王になる者は初代王ユスティーアから連なる全ての代の王の記憶を引き継ぐというものである。

こうしてユスティーア王国は999年、他勢力と冷え切った争いとぬるま湯のような安寧の時を繰り返しながらも、発展してきた。

王国誕生から1000年目に生まれた王子『ティレア』が、歴代の王の記憶の引き継ぎに失敗するまでは。

そして物語へ

ユスティーア王国国王、レイリスは王妃ルーシーとの間に三つ子を産んでいた。男子が二人、女子が一人。名は男子がティレアとレライエ、女子がアルシェラであった。

記憶の引き継ぎに失敗したティレア王子を、父王レイリスは忌み子とした。しかし親心から殺すことはできなかった。レイリス王は弟であるレライエ王子を改めて次期国王とすることに決めた。離宮で腫れ物のように扱われ育ったティレア王子は、幼いながらに自身と両親との間にある壁を感じ、孤独感に苛まれていた。

ティレア王子が五歳になる頃、レライエ王子が歴代王の記憶の引き継ぎに成功する。ますます居場所が無くなったティレア王子の前に、『アイ』と名乗る旅の楽士が現れる。アイはティレア王子に、共に世界を見に行こうと手を差し伸べた。

ティレア王子は、その手を取った。

そしてティレア王子はただのティレアとなり、アイからもう一つの名前『エラ』を授かり、歌と楽器を習いながら楽士として育つ。

レライエ王子は記憶の引き継ぎに成功し、幼いままに国王となった。

アルシェラ姫は姫君として全ての者に愛されて育ち、そして大陸の神獣とされるグリフォンと心を通わせる存在となった。

共に生まれた三人は、それぞれの道を生きた。どこか自身が欠けたような感覚を背負いながら。


三人が十歳になった頃。先王レイリスと王太后ルーシーが突然死する。原因は病とされた。記憶を引き継いだとはいえまだ幼いレライエ王の代わりに政を行っていた先王が亡くなったことにより、レライエ王が完全に実権を握ることとなる。


そして、物語は四年後、レライエ王とアルシェラ姫、そしてエラ……ティレアが十四歳になった日から始まる。

終焉の星王

先王レイリスと王太后ルーシーを殺し実権を奪ったのは、レライエ王その人であった。

レライエ王は、引き継いできた999年分の全ての王の魂の記憶から一つの思想に至る。それは、発展のためと称した争いを止めないイル・リーンとイル・リディアから、争いの種を取り除こうというものだった。
そのために、戦乱を引き起こし眠れる神を目覚めさせ、その力を使い、全ての人間の魂を肉体より昇華させ、浄化しようと考えた。肉体を捨てさせた魂だけの存在になれば、種族の差は無くなるからである。

レライエ王が十四歳になる頃、彼はかねてから冷戦を重ねてきたアーシェス王国に宣戦布告をする。国土を拡げようと考えていたアーシェス王国はこれに応え、南北で戦争が始まった。


これに賛同できない者もいた。ユスティーア王国の騎士たちの一部は、騎士団長キリエに率いられ、かつて城から去った王子ティレアを探し新しい王にするべく動く。

アルシェラ姫はレライエ王の真の野望を語られた存在であった。まるで物語を語るかのように笑顔で世界を滅ぼすことを語る弟に恐怖を覚えた彼女は、グリフォンたちと共にユスティーア王国と弟を999年の妄執から救うことを決意する。

ムーヌ公国とアーシェス王国の境近くの村に立ち寄っていたティレアとアイは、村が山賊に襲われたのをきっかけに元ユスティーア王国の騎士たちと再会する。
あれよあれよという間に、革命軍の旗印にされたティレアは、覚悟を決める暇も無く戦場へ旅立つことになってしまった。

999年の記憶と1000の絶望を手に世界を滅ぼす決意をした『ロード』レライエ、世界を守ろうと決意した『ロード』アルシェラ。そして未だ決意のできていないまま『ロード』となったティレア。三つ子の運命が重なる時が来た。

世界は、人間は戦乱により滅んでしまうのか、神の手で滅んでしまうのか。それとも滅びを食い止められるのか。答えは三人の手にかかっている。

イルの種族とグリフォン

『イル・リーン』
魔法を扱える者の総称。全てのイル・リーンにその力こそあるが強度は様々で、強い力を持った上で自在に操れる者が魔道士と呼ばれる。
魔法とは、星そのものでもある大気中に漂う精霊『マナ』と、自らに渦巻く力『オド』を、特定のリズムや旋律で混ぜ合わせ、炎、風、雷、光、闇など属性に分かれたものとして発現させる物。要は歌や踊りが力となる。

イル・リーンの魔道士は、魔法を書物にまとめ、特定の旋律を歌えば特定の効果が出るよう体系化の研究を重ねている。

『イル・リディア』
獣の耳と尾を持つ者、または飛行が可能な鳥のような翼が生えている者の総称。さらに耳と尾を持つ者は巨大な獣の姿、翼を持つ者は巨大な鳥の姿と、頑強なもう一つの姿に化身することができる。
イル・リーンのように魔法を操ることはできないが、大気中のマナの濃度を体で感じることができる。あまり濃度の濃い場所に長時間いると体の調子を崩すことも。

『イル・ディオス』
イル・リーンとイル・リディアが交わった時、ごくまれに生まれる存在。通常、両種族が結ばれた場合はどちらかの外見と特徴を引き継いだ子どもしか生まれないが、イル・ディオスは両親の魔法を扱う力と、化身する力を失わせ生まれ、イル・リーンと同じ外見だがそれより非常に強大なオドと、十代半ばで成長が止まる不老長寿を持つ。また、両性具有であり、マナを視る目も持つ。
一度交わった家系から生まれ、子世代では生まれなかったが孫世代では生まれた、などということもある。

その強大な力と長命から、両親の力を奪って生まれた忌むべき存在とされており、大抵のイル・ディオスは、イル・リーンに混じって、素性を隠し生きている。非常に少数だが、確かに存在している者たちである。

ユスティーア王国の初代国王ユスティーアが忌むべきイル・ディオスだったと、アーシェス王国の一部の過激派からは考えられている。

『グリフォン』
大地を駆ける脚と空を駆ける翼。イル・リーンの知恵とイル・リディアの力を持つと言われる、神獣と称される者たち。
神が人間を見守るために遣わした『神の目』とも呼ばれている。主にユスティーア王国に生息している。

神竜と炎の紋章

『炎の紋章』
発展を象徴した、ユスティーア王国の国旗をそう呼ぶ。

また、大陸のどこかにある、神『アイ』の心臓をそう呼ぶ伝説があるが、その正体はアイの竜石である。

『神竜』
幼いティレアを連れ出した楽士アイの正体であり、その肉体を海に横たわらせ大陸となった神『アイ』のこと。
両者は魂としては同一人物であり、肉体的には別人である。『アイ』が大陸となった後に、眠りについた『リーン』と『リディア』の代わりに世界を見て回るために新たな小さな肉体を生み出し、竜としての力を石に封じ込めた姿がアイ。
石から力を呼び起こすことで巨大な竜の姿になれるが、本来の姿である大陸ほどの大きさではない。

神剣クラウ・ソラス

美しく輝く刀身を持つ細身の剣。剣自ら持ち主を選び、選ばれた者にしか鞘から抜くことができない。

いつか自分達神を越えていくだろうと、神竜アイが自らの牙から作り出し、人間に送った神と戦うための光の剣。

終焉と黎明の星王 舞台設定

終焉と黎明の星王 舞台設定

二次創作オリジナルファイアーエムブレム 終焉と黎明の星王 舞台設定

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-13

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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  1. 創世記
  2. ユスティーア王国と二つの国
  3. そして物語へ
  4. 終焉の星王
  5. イルの種族とグリフォン
  6. 神竜と炎の紋章
  7. 神剣クラウ・ソラス