秋の短歌

台風の後の嵐の置き土産
夕焼け覆う黒い横雲

中秋の雲に隠るる名月に
晴れぬ心の憂さをこそ見れ

中秋を過ぎて残れる蝉の声
友なき時に出づるさみしさ

平日の人も少なき公園の
湖畔に休むかるがもと僕

放課後に基地を作ったあの山へ
帰れるような萩のトンネル

秋萩やなどてもたれて道塞ぐ
その花のみぞ人をとどめむ

ことならばスーパー台風疾くに来よ
今夜帰らん君を帰すな

宿なくし我が家に避難する蟻よ
しばし留まれ我を登るな

新しきものを得るほど我が心
感動をただ消費している

光彩を散らばすようなこう葉が
大空いっぱい散って流れて

奥山の落ち葉の隠すどんぐりを
拾う幼き僕に会う秋

秋の短歌

秋の短歌

最後の一首は角川全国短歌大会で東京新聞賞をもらった歌です

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-12

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