秋の短歌

龍 佐秋

台風の後の嵐の置き土産
黒き横雲おおう夕焼け

中秋の雲に隠るる名月に
晴れぬ心の憂さをこそ見れ

十五夜の月は雲間に隠るとも
雲の裏には名月ぞある

中秋を過ぎて残れる蝉の声
友なき時に出づるさみしさ

平日の人も少なき公園の
湖畔に休むかるがもと僕

放課後に基地を作ったあの山に
帰れるような萩のトンネル

秋萩やなどてもたれて道塞ぐ
その花のみぞ人をとどめむ

そよ風をすすきの撫でる夕焼けの
暮れて冷たき虫の音を聞く

ことならばスーパー台風疾くに来よ
今夜帰らん君を帰すな

宿なくし我が家に避難する蟻よ
しばし留まれ我を登るな

空は澄み星の囁きささやかに
我を置きたる秋の夜長に

道草のかれる秋の葉水たまり
問う人なければこぼれだにせぬ

新しきものを得るほど我が心
感動をただ消費している

春の菜の花かと見ゆる秋の葉に
心もなくし道も失ふ

浅間嶺峠の道は風なくに
我がためにこそ落つれもみぢば

誰か見ん山の岩間のそよ風に
指先よりも小さき花咲く

とおかんやただの平日送りつつ
遠くなりぬる暮らしをぞ思ふ

水落つる音に心も落ち着けば
コーヒーの沸く拂沢の滝

若き日の君にひかれて善光寺
変わる祈りの人も変わりぬ

君と僕さあ初めてのキスをしよう
観覧車があの星に着いたら

光彩を散らばすようなこう葉が
大空いっぱい散りそめている

奥山の落ち葉の隠すどんぐりを
拾う幼き僕に会う秋

秋の短歌

秋の短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-09-12

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