残暑について

残暑について

駐車場のアスファルトに残った、午後三時の余熱が、風で巻き上がる。夏になれなかったできそこないの夏。予感は、内容は忘れたけど当たっていたのかもしれない。きりきり痛まない。ぐらぐら揺れない。だからもう夏じゃない。からからのナメクジがもうすぐゾンビみたいに復活するね。気温も湿度も滅べばいいよ。この秋、ぼくが駐車場に立っていること、それが残暑の証拠で、人体って素晴らしいねっていうことだった。どんな言葉も、どんな感情も、ぼくの皮膚とか、きみの呼吸器系とか、そういう頑丈で強くて強かな連中の前ではまったくもって無力です。アスファルトがくだけない、カッターの刃だけが折れて、ただそれだけの九月。ぼくは生きています、元気です、この世で一番しあわせです。

残暑について

残暑について

元気100%。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted