繭子6️⃣
繭子 6️⃣
-納戸-
繭子は母と義父の交合を見ていたのだ。一五歳の八月の異様に蒸し暑い午後だった。
廊下の奥から声が漏れるのを繭子は聞いた。淫叫は納戸からだった。そっと戸を引いた。隙間の暗闇の奥から奇妙な声がするのであった。
目がなれると、汗にまみれた裸の母が仰向けになり、両の膝を立て大きく両足を開いているではないか。下に裸の義父がいるのだ。股間と足しか見えない。仰向けの義父に仰向けの淫熟した母が乗っているのだ。黒々と茂る陰毛の森に下から隆起が差し込まれているのだ。母の手がその隆起を妖しく撫でている。
義父の手が母の汗にまみれた淫奔な両の乳房をわしずかみにしていた。
女は幾度か母の交接を盗み見ていたが、これ程に露なのは初めてだった。
臍まで延びた濃い陰毛の中に大きな淫乱黒子がある。下から激しく突き上げられるたびに、母の三段腹の脂肪が揺れた。肉欲ではち切れた裸体が発情した獣の様に無様に痙攣した。
間もなくして結合が解かれた。母が義父に股がり口を吸った。崩れた淫らな尻が割れ大きく開かれた。母が隆起を握り濡れた股間に導いて再び押し入れた。尻を淫らに回す。前後に猥褻に振る。性器と性器が叩きあう濡れた音が響く。母は声を押し殺して卑猥な戯言を言い続けていた。
母は、この時には国民学校の音楽教師だったが、戦争を礼賛して、実権を持つ教頭や派遣将校とも交接を武器に談合したのであった。
繭子は疎ましい性戯を盗み見ながら、座り込んで股間に手を入れ、膨れた乳房を揉んでいたのだと言うのだった。
-桃-
つい最近にも、今日と似たような出来事があったのだ。
草乎が遅い昼食を摂りに母屋に行くと、誰もいない。両親は仕事だ。居間で昼飯を摂っていると繭子が入ってきた。二人とも無言だ。
「あの時は風呂に入ってたんだろ?」「そうよ。今日みたいに朝から狂ったみたいに蒸し暑かったんだもの。水風呂に入ったんだわ」
濡れた髪にタオルを巻き、半袖の青いシャツに乳首が突起している。薄く長いスカートをはいている。すると、男がかけている扇風機を黙って移動して、男に背中を見せて座り、股間を広げてスカートの中に扇風機の風を入れ始めた。
「なぜ、あんなことをしたんだ?」「そうかしら?覚えてないわ」「俺を挑発したとしか思えない」
暫くすると、繭子が立ち上がって台所に行き、戻ると向かいに座って桃を食べ始めた。赤い汁がしたたる。赤い唇を紅い舌で舐めた。陰茎が反応した。
「どうしてあんなことをしたんだ?」「何のこと?」「桃だ?」「食べてただけだわ」「これ、何かに似ているって、言ったろ?」「そんなこと言ってないけど。仮に言ったとして、どう思ったの?」「お前の裸を連想したんだ」「私の?」「そう」「それで、熱くなったの?」 「それに、桃の汁をわざとシャツに溢したろ?」「わざとじゃないわ」「汁で濡れて乳首が浮かび上がったんだ」「見てたの?」「見せるためにやったんだろ?」「そうなのかしら?」「それを手で拭っていた」「それが?」「愛撫をしているとしか思えなかった」「自分のおっぱいをどうしようと勝手でしょ?」
繭子は、「また暑くなった」と、言いながら、草乎に背を向けて横になって扇風機を回す。スカートを太股までたくしあげた。
「暑い。裸になれたら気持ちいいのにって、言ったろ?」「ほんとに暑かったんだもの」「普通は言わないだろ?」「そうかしら?」「お前は生まれついての淫乱なんだよ」「あなたこそ、そんなことばかり思ってるから、みんなそんな風に聞こえてしまうんだわ」「お前の尻が淫らに動いていたんだ」「誘っていると思ったの?」「当たり前だろ?」「男って、誰でもそうなのかしら?」「誰でもって?他にもしたのか?」「知らないわ。それより、私のお尻を見ていて熱くなったの?」「そうだ」「したくなったの?」「そうだ」「だから、背後からいきなりスカートをめくったのね」「そしたら、裸の尻が剥き出しになった。なぜパンティを穿いてなかったんだ?」「暑かったからだわ」
繭子は、「厭だ」とは言うが声を押さえている。抵抗しない。足を閉じてはいるが、背後からだから全く無防備な陰茎を当てた。
「何をしてるの?」「お前が挑発するからだ」「そんなことはしてないわ」「仕草のいちいちが厭らしいんだ」「私のせいなの?」「したいんだ」「何を?」「性交」「厭よ。それに、私達は兄妹なのよ?」「義理だろ?」「戸籍上もちゃんとした兄妹だわ」「血の繋がりはひとつもない」「それはそうだけど。不道徳だわ」「性欲なんてそんなものだ」 しかし、その後も続く繭子の抵抗に草乎は萎えた。男は女の隠微な痴態に反応した自分の男根が疎ましかった。
「あの時にどうして萎えてしまったの?」「拒まれると駄目なんだ」「私が拒んだのかしら?」「違うのか?」「そんなに簡単には許さないわよ」「女はしたくないのか?」「何を?」「性交」「さあ。どうかしら?」「性欲はあるだろ?」「教えないわ」
(続く)
繭子6️⃣