星の落下速度

あおい はる

 そらからふる、ほしの、だんだんとちいさくなってゆく、呼吸の音。
 いつも、夜にいる。朝と、昼と、夜と、一日はまわっているはずなのに、ぼくだけ、いつも、夜にとりのこされている。しらないあいだに、みぎの、小指の爪が、われていた。地上に落下した、ほしたちは、すべてをうしなった、ただの石ころとなって、ほし、だったことを、忘れ去られてゆく。ちがうほしからきた、きみが、ぼくの、われた、みぎの小指の爪に、ふれて、そっと、なでる。ぼくがうまれたほしと、きみがうまれたほしの、ちがい、というのは、よくわからないで、ぼくも、きみも、おなじである。あたまも、からだのつくりも、血の色も。ちがうことといえば、うまれたほしだけで、ようは、うまれたくにがちがう、とイコールで、つまりは、なにも、おそれるものはないということ。きみが、ぼくの小指の爪に、こんどはちろりと、赤い舌をはわせて、いつのまにかはじまっていた、れんあい、というものに、ふたり、急降下してゆく。大気圏を突入したあとの、ほしみたいに。

星の落下速度

星の落下速度

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-09-08

CC BY-NC-ND
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