『線香花火』
秋の初めに
手持ち花火の匂い
『線香花火』
公園の入口で
そう言えばこの前まで
夏だったんだなと思う
子供の燥ぐ声と
花火の匂いは
合わさると郷愁的ね
姉が持つ花火の火を
玄関口から怖々と見つめた
あの日もこんな
気持ちだっただろうか
おいでと言われても
足が竦んだの
別の世界みたいで
ママの手をギュッと握った
最後の最後
線香花火だけは怖くないから
パチパチと弾ける光の運命を
アタシの指が左右する
怖がりのまま
大人になったけど
本当に怖いものなんて
ないって知った
パチパチと弾けるのは
いつだってアタシだから
誰かが怖がる顔を
知らん振りで見てるだけ
「線香花火の短命なとこ、好きよ」
『線香花火』