終わらない夕焼けの国
9/5の300字SSの作品です。「終わりへ向かう始まりの歌」の藤崎さんとイヴェットで、「夕」がテーマです。
学校を飛び出して宛てもなく歩いていた少女は、いつしか終わらない夕焼けの中にいた。少し不思議で、心温まるストーリーの絵本。けれど僕はその結末に納得がいかなかった。優しい夕焼けの国からは、いつか出て行かなければならないなんて。
「何で帰らなきゃいけないの? ずっとそこにいればいいのに」
「変わらない世界にずっといるのって、意外にしんどいよ」
絵本の作者であるイヴェットは、キャンバスの上に絵具を置きながら答えた。夕焼けの国は、それが必要な人間の前にだけ現れるという。だとしたら、僕が今いるこの場所こそがその国なのかもしれない。
いつか出て行かなければならないなんて言わないで。だって夕焼けのあとに訪れるのは、暗闇じゃないか。
終わらない夕焼けの国