玉子3️⃣
玉子 3️⃣
-金剛力-
玉子が風呂から出ると、巴女子は晒し木綿の長襦袢を着させて、結界の中に敷いた布団に仰臥させた。シーツは極彩色の大輪の花柄だ。崩れた豊満な身体を包んだ白装束の玉子は、人身御供の如くに神妙である。
広野は結界の外で玉子の尻の絶景を捉えながら、ソファで煙草を燻らしてウィスキーを含む。
巴女子が仰々しく拝礼を済ますと、玉子の裾を捲りあげて、ゆるゆると開闢た。はち切れんばかりの桃色の太股が露になって、未だ湿り気のとれない恥毛の森の濃密な佇まいが僅かに覗いた。
その股間に巴女子が静静と玉串を捧げて、再び礼拝して、恭しく祝詞をあげ始める。最早、獲物を完璧に捕獲したと確信した広野は、その陳腐だが異様に淫乱な光景を眺めながら、ウィスキーを飲み続ける。
すると、長い祝詞の後に、巴女子がただならぬ様子で長い息を吐くのであった。起き上がって対座した玉子に、「これはいけません。滅多にない極めて因業な悪霊です。私の祝詞だけでは容易く退散するものではありません」告げられた玉子が、すぐさま、眉間に深い皺を走らせて、「どうしたらいいんでしょう?」
巴女子がおもむろに言うのである。「あなたの名前の玉は、即ち陽の極端な表れなんです。陽は陽根に通じます」「陽根?」「男根です。大好きでしょ?。正直に…。どうなんです?」「はい」「大好きなんですね?」「大好きです」
「あなたの本性は男性の気なのです。煩悩のうちでもとりわけて征服欲、即ち我執が勝って強いのです。それでいながら、男根への執着も人一倍に強欲だ。男根に貫かれたい欲。絶頂を極めたい法悦欲に支配されているのです」
「それに、色欲の中でも質の良くない被虐願望、平たく言えばマゾヒズムの性なのです。余すところなく射精を堪能したいという膣本位欲が人一倍強いのです」「即ち、自らが男根でありながら、他の男根との交わりを待望するという、実に不可思議な人格なのです」
「雌雄同根、或いは性別矛盾ともいえる現象があなたには現れているのです。下世話に言うなら、いわゆる「男を食い殺す」相です。「カマキリ女」ともいいます」
「この場合の処方は極めて難しいのです。その上に、あなたの場合は仏教を商いにしたり、躊躇いもなく改名をするなど、謙虚や畏れの感覚が異様な程に欠落している」「喜濡さんのご紹介ではありますが、残念ながら、所詮は女の私、修行の足りない非力な陰の妙法のみでは、到底太刀打ちもできないのです。このままに、強力で禊ミソぎを続けるなら、私の心身は困憊、破断の極みに至るでしょう。本日はこれまでと致します。ご了承ください」
「しかと、わかりましたか?」
そもそもは短慮な性の玉子が血相を変えて、「わかりました。そしたら?」と、身仕舞いを始めた。
「お待ちなさい」と、巴女子が慌てるが、「でも?」「お待ちなさい。あなたの、それがいけないのです。静まりなさい」玉子が座り直した。
「いいですね?それでは、改めまして。しかし、あなたが望むなら必ずしも方途がないわけではないのですよ」「あるんですか?」「あります。どうしますか?一切をお任せ頂けますか?」「お願いします」「一切を?ですね?」「はい。一切をお任せいたします。何卒、必ずお救いください」
「わかりました」居住まいを正した巴女子が御幣を激しく振る。「それでは申し上げます。この災厄を取り除く唯一の手だては、もっと強い陽、即ち真正の男根であなたの悪性を根絶しなければなりません。よろしいですか?」「男根で?ですか?」「そうです。しかし、並みの男根では決してなりません。神聖な金剛力でなければなりません。汚れたその膣をたぐいまれな聖なる男根で浄化して、再生させるのです。お分かりですね?」
-浄化-
やはり晒し木綿に着替えた広野が、巴女子に命じられて玉子の前に立った。すでに股間が盛り上がっている。仰ぎ見ている玉子が息を殺した。膝まずいた巴女子が、「ご覧なさい。たぐいまれな金剛力のあらたかですよ」と、裾を開くと、広野の隆起が真裸で現れた。片手で男根を包みながら、「浄化します」と巴女子が言って、口に含んだウィスキーを振りかけたのである。広野が低く呻く。
巴女子がおもむろに亀頭を含んで舐めあげる。男根がみるみる膨張し始めた。玉子が音をたてて唾を飲んだ。
やがて茫茫とした玉子の耳に巴女子の声が届く。「いよいよ聖なるお清めを執り行います。いいですね?」玉子が深く頷く。「裾を捲るのです」玉子が裾を捲った。股間が曝されて陰湿に脈打っている。淫靡な食肉の獣の有り様だ。 凝視する広野が喉を鳴らした。巴女子の指がひんやりと膣に侵入した。「思った通り随分と汚れている」
いつの間にか、巴女子の指が広野の指に入れ替わった。玉子は気付いているのだろうか。男の指の怪しげな動きに呼応しながら、巴女子が玉子の陰核にウィスキーを吹き掛ける。玉子が嬌声をあげた。
巴女子と広野が戯れ言に溺れながら交合している。眼前には、二人の企てで余りの悦楽に悶絶した玉子のふしだらな全裸が腹這いになっている。
「この女のはどうだった?」「良かった」「私のとどっちがいいの?」「玉子だ」「まあ。悔しい。ぬけぬけと名前を呼ぶなんて。憎らしい。こうしてやる」女が力んで、「どう?絞まってる?」「きつい」「気持ちいい?」「いい」「あなたのも動かして?」「こうか?」「そうよ。いつもより淫らに動いてるわ」
-黒子-
巴女子が風呂に行った。広野が玉子の尻にキスをした。
気付いた女が、「私。どうしちゃったのかしら?」目の前に広野が座っている。「夢を見ていたわ」「どんな夢?」「雲の中を漂って花畑にいるの股間に花束が添えてあって。蜜蜂が飛んできて。おびただしいのよ。女王蜂が子供を産んだわ。私のによ。そう。私の膣によ」
「あの人が言うように、私のは汚れてるのかしら?」と、呟く様に玉子が言った。男が神妙な面持ちで答える。「外見はすこぶる綺麗です。中身もまんざらでもなさそうだ。ただ、問題はこれが、即ちあなたがどんないきさつを経てきたのか、なんです」「いきさつ?」「この器官の、即ち性の履歴が重要なのです」「それこそが実に、人としての品格に関わっているからです。わかりますか?」膣を緊迫させた女が頷いた。
「それを解明するためには、こういう触診の前にまず問診をしなければなりません」「問診?」「あなたの混迷する心理の真相を解明する為には是非にも必要なのです。ですから正直に答えてください」「わかったわ」「今まで何人と交接しましたか?」男の指が催促する。「正直に答えなさい」その指に劣情の肉を絡ませながら、女が、「…八人」「絶頂は感じますか??」「絶頂って?」「満足感です」女が小さく頷く。「根っから交接が好きなんですね?」「あなたは生まれついての淫乱なんですよ」
「ここに黒子が三つありますね?」男が股間のすぐ脇の黒子を指摘した。「これは狂い黒子と言って、色淫の典型的な相です」女が怯む。「獣欲の相とも言います」「そうなの?」「かの北条政子や日野富子、西太后にもあったと言われています。男を利用して食い殺す、究極の我欲の悪相です」「私ってそんな風なの?」「そうです。あなたはたぐいまれな利自欲の強い我なんです。我執の塊。それがあなたの災難の根源なんです。あなたのよってきたる災いと汚れを浄化して、健全な利他心を取り戻すためには、その履歴を全部消さなければなりません」「そんな事ができるの?」「この金剛には霊力が宿っています。一〇〇〇回の交接で汚辱にまみれた悪性を金剛力のたった一発で根絶する事が出来るのです。あなたの履歴なら三発で、あなたは再生できるのです」「再生って?」「無垢だった処女の時代に戻るのです。初めてはいつですか?」「一八だったわ」「だったら、心身ともにその頃に戻れるのです」
玉子が仰臥して太股を開いた。広野が祝詞を唱える。唱えながら挿入した。
玉子が広野に抱きつき濡れた舌でキスを求める。長い戯れ事の後にようやく唇を離した女が、「あなた。キスが上手いのね」「あなたこそ」女が股間に手を伸ばして、「厭だわ。こんなことになったのに他人行儀でしょ?」と、強く握りしめる。「名前で呼んで」男が女の名前を呼ぶと、女は身悶えする。「そんな生易しいんじゃ厭よ」「もっときつく噛んで」「キスマークをつけて」「あの女がどう思おうといいじゃない?知ったことじゃないわ」「いったい、あの女とあなたはどんな関係なの?」「どうせ爛れた肉欲だけで繋がってるんでしょ?」
「喜濡とも嵌めたの?」「やった」「どんな風にして?」「あの女の身体はどうだった?」「あいつは肉の塊だ。それも熟れすぎて。腐肉だ」「やり過ぎたんだわ」「所詮は淫乱女よ。」広野の声音が変わった。「お前だって相当なもんだ。議長とは寝たのか?」
(続く)
玉子3️⃣