800ss day4
深更の中で浮かび上がるのは不眠気味のコンビニエンスストアだ。
好きでもない酒と揚げ物だらけのつまみのダブルパンチで胃は悲鳴を上げている。腹を擦りながら店内に入ると、蛾が一緒に来店した。
店内には眼鏡の若い男性店員と、還暦が近そうな男性店員、店内に商品を搬入しに来た業者、それから成人誌コーナーで卑猥な表紙の雑誌を物色する恰幅の良い男がいるだけだ。
真っ先に弁当コーナーに向かうと、鮭弁当が廃棄寸前だった。今だとカードにポイントがつくらしい。そういった類のポイントカードが財布にわんさかと詰まっている。ちなみにポイントは使ったことがない。
弁当とおにぎりを入れて、製菓コーナーに移ると、女子向けにデコレーションされたカップケーキも売れ残っている。それもカゴに入れた。脇では店員が商品を棚に並べている最中だ。
もうひとつ甘い物をと物色していると、自動ドアから来店のメロディが流れる。この時間帯だといかにも柄の悪い若者が来たりする。
特に興味もなかったのでデザートを選んでいると、不意に「先生?」と声を掛けられた。
カフェオレの缶をぶら下げた青島だった。
「不良か」
「違いますよー! 早く起きちゃったから眠気覚ましを買いに来たんです!」
「不良だな」
「もー……。バイトがあるんですよ」
そういえば新聞配達をしていると聞かされたことがある。しかしそれだけだ。青島が何をしようがしなかろうが自分には関係ない。
「あっご飯買ってるんです? ケーキもある! これ人気ありますよねー。俺甘いのそんなに食べないから分かんないけど」
「分からないのに言うのか」
「そうですねぇー。でも美味しいって分かった方が嬉しいじゃないですか」
若者はよく分からない。青島は変な情報を垂れ流してこちらに仕掛けてきているのではと疑うくらいだ。
すると青島は焼きプリンを手にするとレジに向かった。若い店員が会計をする。覇気のないありがとうございましたが淀む中、小さなレジ袋をずいと突き付けた。
「これあげますね」
「は?」
「それは俺も食えるし美味しいから。あっじゃあ行きますね、バイバイ!」
コーヒーを片手に黄色い嵐は去っていった。残されたのは会計が終わらない商品と、奴の勧める焼きプリンだけだった。
800ss day4