固まる

最初は人差し指からだった。


学校給食の仕事を始めたのは約1年前。自分が栄養士の資格を持っていたことと、土日祝が完全休みで退勤時間が早かったことが決め手だった。出勤時間も早いが。

今日のメニューはサラダうどんと大学芋。
私は頭の中で調理工程を思い浮かべながら、誰もいない厨房のシンクでさつまいもを切っていた。

生のさつまいもは固く、包丁に体重をかけないとカットすることが出来ない。
きゅうりとか玉ねぎみたいにテンポよく切れたらいいのに。鬱々とした気持ちで切り進める。

ふと気がつくと、人差し指の先端に僅かなしびれを感じた。いや、感じたというよりも感覚がない。

さっきまで確かにそこに「あった」ものが突然無くなる感覚。いや感覚がないのだが。そもそも「ある」と「ない」は何が違うのだ?「ある」「ない」と感じることがそもそも錯覚だとしたら?
私の身体と思考は私のものだと思っていたが、実はそうでは無いのかもしれない。
この世界には神さまみたいなのがいっぱいいて、私たちは実はその神さまたちの仮想現実ゲーム内のアバターみたいなもので、時々こういったトラブルやバグが発生するのかもしれない。そうだったら面白いのにな。

そんな事を考えながら、感覚のない指を無視してさつまいもを切り続ける。

固まる

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