夢日記 2020.9.3

夜の図書館はひんやりとしていました。
歩き疲れたぼくは書架に背をもたれて床に座りました。どこからか賛美歌が聴こえてきます。ぼくはその曲を知らないはずなのに、不思議とそれが賛美歌だとわかりました。とても疲れていたので、そのままぼくはぼんやりと、向かいの書架に並べられた本の背表紙を眺めました。その中に一冊だけ、背表紙になにも書かれていない本がありました。誰かがそこに隠したような、薄い文庫本でした。ぼくはその本を抜き出して、紺色の表紙をめくりました。
本の扉には何も書かれていません。ページをめくると、そこには手書きの文字で、一篇の詩が綴られていました。題名はありません。詩の最後には日付が記されてありました。
次のページには、前のページとは違う筆跡で、また詩が書かれていました。つけられた日付は、前の詩から数年後のものでした。次のページも、その次のページも、別の人が別の日に書いた詩が綴ってありました。
そのままぱらぱらとページをめくっていると、しおりが挟まっていたところで手が止まりました。そこから先は白紙のようでした。そうか、と思いましたが、ぼくはペンを持っていませんでした。ぼくはしおりを次の白紙のページに移して、本を閉じ、元の場所に戻しました。賛美歌はまだ流れ続けています。ぼくは立ち上がって、また歩き始めました。

夢日記 2020.9.3

夢日記 2020.9.3

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-03

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