虫歯について

虫歯について

もう取り戻せなくなった時間とか、基地外じみた発想が、重力にしたがって落ちていく。手を伸ばす気力もなくて、ダリが鼻で笑うような、やわらかさとだらしなさ。あの日どうしてもかみ砕けなかった言葉を、自分の歯のせいにする。
歯茎から腐って、次々と抜けていった。噛みつけない。ついでにこのまま、眼球もぼたぼた落ちていけばいいのに。肉体と、雨。静かに受容するだけでいいよ。地面に浸透していくいのちの終わり。ヌーディストとはこういうことだったのかな。
取り戻す気なんてさらさらない、
くじらがバクハツして、拡散する臓物、晒す、RT、グロい。ってことはたぶんまずいスープだな。それでもアスファルトの上を歩いていく、夏休みが終わったら、一瞬で何もかも元通りになって、無意味な時間がまた増えていくんだろう。たんぱく質を分解して生臭いだけのからだにしてほしかった。歯がポロリと落ちるけど、顎はついていない。だから硬いけど用無しだ。何かをわすれていて、それでもってしあわせになったつもりでいる。本心を確かめに行く気力はもうない。

虫歯について

虫歯について

くじら。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-02

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