高校生くノ一の渇望した感情
自殺したいほど悩む夜がある。
谷奥 瑠璃花は十六歳。先祖代々、名家である宮前家に付き従い、表では身の回りのお世話から、裏では汚れ仕事も厭わず何でもやり、身命を賭けて尽くすかわりに養ってもらってきた。いわば専属の忍者である。
彼女は、同じ年に生まれた宮前のお嬢様、音色の一の家来として育てられた。生涯をお嬢様に捧げる懐刀として。
しかし、成人も間近に迫った高校生になって、瑠璃花はつくづく自覚していた。
音色お嬢様に忠誠心が持てない…………。
別にお嬢様にパワハラされたりしているわけではない。我が子でもない瑠璃花を育て、義務教育の小中学校のみならず高校にまで行かせてくれた旦那様と奥方様には心から恩を感じるのは当然だし、まるで実の妹のように分け隔て無く接してくれるお嬢様のことをお慕いするのが当たり前だと思っている。
しかし、そう出来ない。お嬢様のことを真剣に想う感情など湧いてこないのである、どうしても。学校での人間関係だとかの方が重要に思えてしまう。
四年前に病死した母は、奥様に熱烈な忠誠を捧げ続けていた。上辺だけではない、本物の愛情が間違いなくあって、奥様の為に身も心も燃やし尽くして働き、三十代で天国に行った。
それに引き換え、自分の情の薄さは一体なんなんだろう。それを思うと、辛くてたまらなくなって、瑠璃花は眠れなくなるのだった。
「救われたいのか。」
突然、枕元から声がして、瑠璃花はびっくりして跳ね起きた。部屋にいつの間にか居たのは、家政婦の秋美さん。まだ二十歳そこそこだが、優秀なため家政婦達のリーダー的な存在である。ただし性格は暗く、変わっている。
「秋美さん、どうしたんですか?別にわたし、寝苦しかったりしませんし、心配いりませんよ?」
「眠れないようだな。自分が情けなくて悩み苦しんでいる。」
秋美は無表情に語った。
「お前の母親から生前頼まれた。お前がもし、お嬢様への忠義の心と、自分だけの夢や希望との間で苦しむことがあったなら、救ってほしいと。わたくしは、お前の胸のうちからお嬢様への忠烈な心を引き出す呪法を知っている。お前の母を脅……いや、教わったのだ。お前の母は、今のお前の年頃にそれを使ったそうだ。それ以来死ぬまで、奥様への忠誠心は曇ることがなかった。どうだ、使ってみるか?」
「ママがあんなに奥様に本気で尽くせたわけはその呪法なの?!………やってみたい!」
瑠璃花は切実に求めた。秋美は、滅多に見せない優しい微笑みを浮かべて応じる。
「そうか、自ら望んで修羅の道へゆくか。血は争えぬな。では、この呪いの薬を飲むがいい。お前の母が調合したものだ。たちどころに効果が現れるだろう。」
秋美から手渡された小瓶に入った液体を、瑠璃花は思いきって飲んだ。全身が激痛に襲われ、呼吸困難になる。だが、それは数秒で収まった。
「お前は生まれ変わった。お嬢様のところへ行こう。今までとは違う気持ちに気づくことになる。」
瑠璃花は秋美とともに、部屋を出て長い廊下の端のお嬢様の部屋に行った。戸を少し開け、廊下の灯りに照らされたお嬢様の寝顔を眺めた。
途端に体の真ん中の辺りが焼けるように熱くなった。そして変化が現れる。
具体的には、女性特有器官のクリなんとかが突き出して何倍にも大きく膨張した。
「成功だ!ふ××り化の術……!」
「余計なことすんなよババアァァァ!!」
瑠璃花は反抗期っぽく叫んだ。
「落ち着け。いくら騒いでも呪法は一生解除されん。その体と上手くつきあってゆくことを考えた方がいい。」
瑠璃花は思わず、秋美の弁慶の泣き所に思いきり蹴りを入れた。しかし秋美は特殊体質なのか、痛がりもせずに語る。
「もう一度お嬢様を見ろ。沸き上がる感情が無いか?その肉棒はお嬢様だけに反応するようになっている。お嬢様に反応して、熱くいきり立つと同時に!様々な感情をももたらしてくれるだろう。男の×ンコと全く同じ機能があるからな!」
瑠璃花は改めてお嬢様の寝顔を覗いた。美しい顔に見とれてしまう。柔らかそうな髪が、いとおしい。布団の下の華奢な体を思い描くだけで、護らなくては、という気持ちになる。
「どうしよう…………お嬢様が大切でたまらない………!」
微かな寝息や、漂ってくる甘やかな体臭。その全てが瑠璃花を惹きつけて。
「だけどそれだけじゃなくてお嬢様の服をビリビリに破いて体中ベロベロしたり無理矢理恥ずかしいところを触りまくったりしたい気持ちが抑えきれなくなりそうなんだけど!!忠誠心くつがえされそうなんだけどどういうことよ!?!」
「落ち着け。これは悪魔の呪法。気を抜くと、自分のみならず忠誠の対象にまで破滅を招くリスクがある!しっかりするんだ。」
「ふざけんなー!!使う前に説明しとけよー!!」
わめいていて気付くのが遅れたが、いつの間にか瑠璃花の後ろにお嬢様が立っていた。
「うるさいよ瑠璃ー、目が醒めちゃったじゃーん。ん…………?」
お嬢様の視線の先には、瑠璃花のパジャマのズボン、そのテントの膨らみが。
「まずい!逃げるんだ!!」
秋美の叫び。瑠璃花は全速力で走った。
「最悪だよ………このままじゃバレちゃう……そしたらこの家から棄てられるかも………」
自室に戻ってベッドに突っ伏し苦悩する瑠璃花。秋美がいたわって言う。
「泣くな。お前の母から預かっていた手紙を渡そう。お前が呪法を使った時に読ませるように言われていたものだ。今のお前に救いを与えることだろう。」
瑠璃花は手紙を見てみた。
『オナニーのやり方』
毎日オナニーを欠かさず、欲望の管理をしっかりしないと命取りになりますよ。いいやり方を教えます。愛する人、あなたの場合は音色様ですね、その下着を取ってきます。
それ以上は読む必要を感じなかったのでゴミ箱に捨てた。
「ちゃんと読んだ方がいい!終わりの方だけでも読め。お前を心から心配する母の真心に溢れている。読んでやってくれ。」
ゴミ箱から拾って、一応読んでみた。
……あなたはこれから地獄の苦しみの中で生きることになります。想い人への欲情は決して充たせない生殺しの毎日です。オナニーじゃ絶対満足出来ません。激しい欲求不満は寿命が削れるほどです。がんばってね。さようなら。
瑠璃花は行き場の無い怒りに、噛み締めた歯が割れそうだった。しかしどんなに怒りを燃やしても何にもならない。大きくため息をつくと、布団に潜り込んだ。
「とりあえず寝る。秋美さん、出てって。」
しかし秋美は動かない。
「そういうわけにはいかないな。まだお礼をしてもらってない。ここまでしてやったんだ、それ相応の品を頂かんとな。」
「は?」
「瑠璃花は可愛いからな、お礼のしようはいくらでもあるだろう。」
秋美がズズイッと迫る。
「今こそ明かそう………わたくしは、女が大好物な女!その体でお礼をしてもらう!」
「レズって噂は家政婦達が嫌いな人をディスる為の作り話だと信じてたのに………!やめてーっ!」
瑠璃花の悲鳴が響く。
「くくくくく!そうだな、では十六歳美少女のチ×コを触らせてもらおうか。」
秋美の細い指が布越しに瑠璃花の股間を撫でた。
途端に物凄いおぞましさが瑠璃花を襲う。
「お……お……おえっ………」
「あ、そうか!このチ×コはお嬢様以外に触られても決して気持ちよくならない………むしろ気持ち悪くなるんだった!」
「おえええ、げろげろげろげろ…………」
瑠璃花は激しく吐瀉した。吐瀉物は残らず秋美にぶっかかる。
「ああ、十代の女の子の嘔吐!夢のよう!ジュルジュルジュルッ!!!」
秋美はゲロを猛然と吸い込み飲み込んだ。
「あー美味しい……!素晴らしかった!お礼はこれで充分だ……………!」
「ノロウイルスに気をつけなさいよ………じゃ、出てって。おやすみなさい。」
「あー、一つ提案があるんだが。これから二人でお嬢様を襲いに行かないか?」
「何言ってんのババア?!」
もう何度目かわからない叫びを上げた瑠璃花。
「先にやらせてあげるから!それをわたくしが撮影して、お嬢様の口封じに使う!明日からは、昼はわたくし達はお嬢様の言いなりだが、夜はむしろお嬢様はこちらに絶対服従の家畜!興奮するでしょ!?」
「よくそんな汚れきった発想が出来るわね!わたし、そこまでは思い付きもしないわ!」
「わたくしはハードレズだからな!自分の乳首をオカズに夢中でオナれるレベルだ!」
「だったら自分の体を弄んで満足しなさい!」
「駄目だ、性欲とは常に限界を超えて新しい領域に至るものなんだ、ミドルティーンにはまだわからないかもしれないが!さあ、一緒に来るんだ………言うこと聞かないとチン×にむしゃぶりついてギャン!!」
突然、鋭い打撃音が鳴り響き、秋美は奇声を発してばったり倒れた。その背後には、竹刀を手にした音色お嬢様がいた。
「武芸百般を修めた音色を、無理矢理思い通りに出来るわけがないでしょう?しばらく気絶してなさい。」
「お、お嬢様………わたしを助けに来てくれたの………?」
お嬢様はそれには答えず、瑠璃花をじっと見つめた。
「お嬢様………?」
「瑠璃…………………×たなりの呪法を使ってしまったのね?」
お嬢様の視線の先では、瑠璃花の股が未だに怒張していた。
「ぐはぁ!!」
秘密を知られ魂の消し飛びそうな瑠璃花。棄てられる!と思った。
しかしお嬢様の態度はそんな感じではない。
「大事な話があるの………真面目に聞いて。音色にとっては、何よりも大事な話だから………」
頬を赤く染め、うつむくお嬢様。チラリとこちらを見た瞳は、なまめかしく潤んでいた。
「瑠璃。お願いがあるの。可愛い可愛い瑠璃、音色の瑠璃。服を脱いで。裸になって。」
瑠璃花の股間が極限まで熱くなった。お嬢様の天使のような顔が間近に迫る。瑠璃花は生唾を飲み込んだ。
「な、何でですか……………?」
お嬢様は答えた。
「音色、そろそろ彼氏作りたいけど男性恐怖症だからさー、男の研究したくてチ×チ×見せて欲しいの。いいでしょ?脱いでよ。」
そこからは詳細は伏せるが、瑠璃花は非常に惨めな気持ちを味わい、自らの性的能力を矮小に感じて深刻な自信喪失に陥った。おかげでお嬢様に襲いかかることなどとても出来なくなり、平和な日常は守られたとさ。
めでたしめでたし。
高校生くノ一の渇望した感情