カムイの儚3️⃣

カムイの儚 3️⃣


-多恵子-

 二日後の土曜は祝日だった。一〇時頃に草也は薬局に行った。丸子が言った通りに多恵子がいた。久しぶりに見る少女は青いワンピースを着て驚くほどに大人びている。中背でグラマーだ。乳房や尻の圧力に男は時おり視線を落とした。
 多恵子は電力会社の駐在員の娘で高校二年だ。父親の転勤で、三年前に少し離れた町に移っていた。転勤前には時おり見かけてはいたが、話すのは幼いあの時以来だ。だから、初めて話すのに等しいのだった。

 草也が小学四年の夏休みの時だったから、少女は中学一年だ。ある事情で少女の官舎に泊まった。少女の弟を真ん中にして寝ていた。大人達は離れた部屋でサークル活動をしていた。そこには丸子もいた筈だった。
 異様に蒸す夜だった。深夜に男が目覚めると脇に女がいた。女が話し始めた。「小学六年の秋に、近所の子供達とキノコ取りに行った山の中で、ある中学生に抱かれたのよ。とっても持ち良かった。同じ事をしてあげようか?」そして、二人は裸になり交合したのだ。幼い日の男のたった一度の交接の記憶である。

 二人は近年の来し方の概略を報告しあうと、丸子の前では特段に話す事もない。「時間はふんだんにあるんだからね。でも、昼には降りてきて。美味しいのを用意しておくわ」と、丸子に送り出された。明日は日曜だから二人は泊まる事になっている。
 丸子は多恵子が便所に行った隙に、草也に艶かしいキスをしながら股間を撫でて、「教えた通りにゆっくりとするのよ」「あの娘は写真が大好きなの」「私の事は絶対に言っちゃ駄目よ」と、念を押した。

 二階に上がると派手な布団が目に入った。
 異様に暑い午後だったが南と北の窓が開け放たれていて、柔らかな風がカーテンを揺らしている。敷かれた布団を前にして、とりわけ男は余りにもぎこちない風情だ。枕元に男物と女物の浴衣がある。「私が用意したの」と、バックから取り出した本や写真の束をその脇に置いた女が、「窓はこのままでいいわね」と、言う。男は煙草を吸いながら所在なげに外を確認する態だ。
 吸い終わるのを確かめると、女が背後から抱きついた。豊満な肉の柔らかい感触と体温が伝わってくる。女の手が股間に廻って留まった。
 「キスをして」と、せがむと、男が振り向いた。女が身体を崩すと重い乳房を抱き止める。 顔をあげた女が赤い唇を濡らして目を閉じた。男の唇がその厚い唇を捉えた。歯がぶつかった。
 折り合いをつける様に、女が男の唇を優しく濡らす。女の舌が男の舌を探る。唇で捕獲して逃がさない。股間を愛撫する。長い遊戯が互いの存在を納得するまで続いた。
 「あの夜を覚えている?」と聞くと、女が頷いた。「忘れるわけがないわ」と、女が男の指を股間に導いた。
 「あの夜、ここにあなたのが入ったのよ」「とっても気持ちが良かったわ」男が滑らかな尻を撫でる。「あの頃より大きくなったでしょ?」「丸くて柔らかい。むっちりしてる」
 二人は布団に横になった。仰臥した男に寄り添って横臥した女が、男根に手を添えた。

 男が「あの時に射精はしたの?」と、とりとめもなく聞く。「覚えてないの?」と、握りしめて、「したわよ」「はっきり覚えてるもの」「熱かったわ」
 「どうしてあんな事をしたんだろう?」「わたしがキノコ採りでした話をしながら、こうしてあなたのこれを撫でてたら、固くなって」「本当に山でされれたのか?」「あれは嘘だったんだわ」「抱きつかれて。下着の上からちょっと触られただけなの」「怖くなって。追いかけられたけど逃げたの」「キスはされたのか?」「してないわ」「男のは見たのか?」「見てない」「なぜされたと言ったんだ?」「あなたとしたかったからよ」「なぜ?」「わからないわ。でも、あなたに抱かれたかったの」
 「あの夜にしたんだから私はもう処女じゃないんだわ」「でも、したのは今までにあの時の一回だけなのよ」「他には誰ともしてないの」陶酔の激情が二人を包んだ。

 二人は裸になって浴衣を着た。「弟のを借りたの」「似合うわ」と、見つめる。男の視線を察して、「丸子さんから本を借りて読んだの。写真も見たわ」「あなたも?」男が頷く。「凄かったでしょ?」
 向き合って横臥する。女が手を伸ばして裾から取り出した陰茎を握って優しくしごき始める。「あの写真。みんな凄かったでしょ?」「厭らしいんだけど」男の指を膣に導いた。「濡れてるでしょ?」「見てるだけで気持ち良くなるんだもの」「濡れてくるのよ」「いじりたくなっちゃうの」「そんな風に。指を入れたわ」「あなたは?」と、男の股間を確かめて、「これ?未だおとなしいのね」男は丸子の助言を噛み締めている。

 長いキスをした。女の唇に馴れた男が女の胸元をはだけさせて、柔らかな肉が充満した乳房を取り出し丹念に舐める。「キスマーク。つけてもいいわよ」と、女が呻いた。
 陰茎は未だ雰囲気に馴染めないのか、隆起の兆しがない。
 「私がお姉さんだもの」「リードしてあげるわ」と、女が下半身に覆い被さった。「さっきの写真みたいにするのよ」多恵子が男根を舐め始めた。舌で弄ぶ。
 暫くすると男に合図した。「見て?写ってるわ」立て掛けられた大きな鏡の中に、勃起した男根にまとわりつく生々しい少女がいた。少女が太股を大きく開くと繁茂する恥部が飛び込んできた。「みんな見えてる」「凄いわ」
 女の言葉遣いと声音がすっかり変わった。「あの雑誌の性愛小説を真似るのよ」と、女が唇を舐めた。唾で濡れた舌が鬼頭を這う。厚い唇が包み込んで、吸う。
 「今日は大丈夫なんだけど念のためにね」と、唾で濡らした隆起に口で避妊具を被せた。「丸子さんに教えてもらったのよ」
 女が仰臥して両足を広げた。男が股がった。
 「重くないか?」「大丈夫」躊躇していると、女がつまんで濡れた陰道に導くのであった。

 「丸子さんとしたんでしょ?」「してない」丸子に固く口止めされていた。「嘘だわ。後で丸子さんも来るのよ?」男が真実、驚いた。「知らなかったの?」「聞いてない」「三人でしてる写真。見たでしょ?」「見た」「何か言われなかった?」「ない」「私は承諾したのよ」「でも、あなたが嫌ならしないわ」


(続く)

カムイの儚3️⃣

カムイの儚3️⃣

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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-28

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