夜のミキサー

 いのちが、いちばん、あたたかいと思ったときの、あの、夏が静かに過ぎ去ってゆく真夜中に、きこえる音、波のさざめきにも似た、歌声のようなものに、心臓を、やんわりと撫でられる。秋がはこんでくるもののなかに、きみの影があって、都会の、うんざりするくらい高いビルのなかの、まあたらしい美術館の展示品に、いる、うつくしい少年たちが、いつも、遥か遠くの、春の風景をみている。だれかのために祈る行為に、近しい、恋の末に、永遠ということばの無垢さを、知る。
 爪が、夜の色に染まった。

夜のミキサー

夜のミキサー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-28

CC BY-NC-ND
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