大外刈りを決める

8月の武道館は酷暑だ。
私立高校なのに何故クーラーを付けないのかと、ユミ達はボヤいた。何かの美学か、建物の構造の問題か。
6台の大型扇風機が熱風を撒き散らす。
柔道着は厚みがあり暑い。着崩すのは作法に反する。
武道館には汗と熱気が立ち込める。

ユミは大柄の部員と組んで乱取りを始めた。
襟を掴み、相手の息を感じる。
汗で手が滑りながらも、相手に揺さぶりをかける。
集中して、冷静に隙を待つ。
相手がバランスを崩す一瞬を見つけて、ユミは足を刈る。相手の体は浮いて畳の上に倒れた。
相手の上に振りかぶったユミの額から汗が噴き出して、弧を描いて畳に飛び散った。
熱風を全身に浴びて、ユミは息を整えた。

大外刈りを決める

大外刈りを決める

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-24

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