あくまで比喩的な A´

nuruwota 作

凪 訳

nuruwotaさんの作品をお借りしております。

「じゃあ、飲み物でも買ってくるよ」
部屋の扉がゆっくりと閉まるのを見届けると、私の中で張り詰めていた緊張が一気に解けた。

壁時計の針は16時を指していた。2人でここに着いたのが15時20分頃、気づけば窓の外はうっすら橙色に染まっている。そこまで長い時間一緒にいた訳ではないはずなのに、気の遠くなるような時間を過ごしていた気がする。

枕の隣に落ちた下着を拾い、意味もなく履き直してから浴室に向かう。少し頭をスッキリさせたいな。

浴室のドアを開けのろのろと足を踏み入れる。蛇口を捻り、シャワーを頭から浴びた。ちょうどいい湯加減だ。
シャンプーの容器を手に取る。余談だが、私は体を洗う時上から洗っていくタイプだ。
いつも通りシャンプーヘッドを押し込み、髪を洗うためのそれを掌に出したところで、意図せず動きが止まった。
勢いのままに手に散った白濁液を見つめていると、先程の光景が頭によぎる。

「こういうの、初めてだった?」

そう言ってこちらの反応を窺う、明らかに楽しんでいるような目線。悪戯っぽくにやりと上がった口角。目が合った瞬間、きらりと唇が輝いた気がした。
何と返答したかは記憶にない。

私は脳内からその艶かしい姿を追い出すように、いつも以上に入念に髪を洗った。

バスタオルで体を拭き、部屋着を身につけたところで部屋のインターホンが鳴る。

せっかくさっぱりした背中に一筋の汗がつたうのを感じた。意味もなく静かにドアに近づく。私はごくりと唾を飲み込み、ドアノブに手をかけた。

あくまで比喩的な A´

あくまで比喩的な A´

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • ミステリー
  • 青年向け
更新日
登録日 2020-08-21

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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