ひとりぼっち

 昔から曲がったことが大好きで 歪んだ鉢を集めては悦に浸っている
 たわしで歯を磨き 汗だくで躓く人を指差し笑うのを日課としている

 渋滞の騒音を聞きたくないから ツバメの巣を避けて逃げ惑っている
 ビールの空き缶を踏み潰しながら 壊れた羅針盤を後生大事に抱えている

 自転車に二人乗りする少年少女に中指を立て
 橋の下で泥になっている野良犬を見下ろし
 善意の集金会場を恐れてそそくさと通り過ぎ
 光り出す四角の群れに本日も怯え慄きながら

 ぶつくさぶつくさ 箱の隅で喋っている 耳詮をして

 睡眠薬が足りないから買いに行こう
 財布の中には二銭銅貨 どこにも捨てられず
 睡眠薬が足りないから買いに行こう
 灰の壁から染み出す酸素で窒息しないために

 光り出す四角の群れに 本日も怯え慄きながら

ひとりぼっち

ひとりぼっち

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-20

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