夏の夜をあるく
よろこびのつぎには、あいがきた。
なんだかもう、すべてをあいすることにしようと決めた日が、あったのだ。じぶんのなかで、これはあいさない、これはあいする、ではなく、みえるもの、きこえるもの、ふれるもの、ぜんぶをあいそうと。
氷河期のつぎには、四季がうまれた。わたしたちは、みんな、船に乗って、かなしみを乗り越えてゆくのだとおしえてくれたのは、なまえもしらない神さまだった。だれかのために生きようと思った瞬間に、だれかに裏切られたのは、残酷なくらいに暑い夏の午後で、あらゆる肉を焼きつくすかのごとくふりそそぐ太陽の光に、めまいしかしなかった。あしたになったら冬になればいいのに。そうひそかに祈りながら、わたしはかき氷をしゃくしゃくたべていた。いちごシロップの。
ネムのとなりには、いつも、あいつがいて、わたしは、いるようで、いなかった。
こいびと、などということばで、あいつはネムをしばりつけていて、わたしは、しんゆう、という立場で、ネムのよわさにつけこんでいた。よく行くコンビニのレジのおねえさんが、コンビニの裏で、たばこを吸っているのをみた。おねえさんとたばこが、まるで結びつかなかったので、びっくりしたし、でも、意外と似合っていた。ネムがあいつと、コンビニでコンドームを買っているのをみたときは、ひたすらに吐き気がしたのに。ぼんやりと、冬になったらかき氷はたべれないのか、と思いながら、わたしは、夏の夜をはだしであるいた。
夏の夜をあるく