俺の思っていた恋はこんなのじゃない!

いつもより暑い夏。いつもより面倒な学生生活。いつもより腐ってる人間関係。なぜこうなってしまったんだろう。俺は今真夏の修羅場に立たされている。俺の思っていた恋はこんなのじゃないからだ!!

序章 ―平凡生活の終焉

―さて流石に仕事を気にする時期。大学の単位は真面目にしていたためか、あと少しといったところか。俺はバイトに明け暮れ、割と満喫している学生生活だった。いつも友人である、聡太と美咲と遊んで…ありきたりな生活だったけどそれが良かった。別にスリルなんて求めてないし、欲もない。いつまでもこんな生活をしていたいと思っている。恋愛や大人数との繋がりはないけど、そこまで求めてない。正直リアルがそこそこ楽しく満喫できていたからだ。まぁそんな生活が今後ぶち壊れるとも知らずに。

―4月13日、そんなとある日に美咲からメッセージで黒瀬ユウの存在を知ることになる。軽い内容としては、「よっ!メッセージで送るのは久しぶりだったね♪いやさ、黒瀬ユウって知ってる?すっごく可愛いんだよ!お前とくっつけたい!」という文面である。うん。さすが内山美咲様だ。とてつもなくうざいメッセージを送ってくる。おそらく美咲はこの前彼女だった佐々木利奈と別れたからそれをネタにしていることだろう。正直めちゃくちゃ傷が残っているっつ―の!!まぁその後にそことなくメッセージを繰り返してみると、自分の住んでいる笹野荘から割とほど近いらしい、…というかこの辺りの家で黒瀬家って大豪邸のことなのか。。。?つーか仮にその大豪邸の家の娘だったとしたらあいつどんな人脈なんだよ。…違うと信じたい。

―4月23日。美咲と話して数日たった。もう美咲がやたらと推してきた女…名前を忘れた。もちろんそんな女の話は既に忘れており、いつもの生活に戻っていた。そりゃ恋バナみたいな話だなんてほぼ妄想話だし、そんなのを明確に覚えている方がおかしいさ。
てか講義遅れるじゃん!!無駄に考えごとをしてたせいか、頭がおかしくなっていた。そしてついた大学が俺の行っている桜舞大学(オウマ)である。どこにでもある普通の大学だと思う。付近は割と街になっており、いろんな建物がある。まぁ住みやすいところではあるかな。俺は外れに住んで遅刻仕掛けたんだけどねえ。
そんな事を考えていたら、なんとかの思いで講義に間に合った。まばらに生徒は散りに散って隣に座るやつなんているわけがないのだ。まぁいつでも開いてるしレポートをそれとなく書いて提出すれば、楽に生きていける入学後は楽な現実である。
そりゃ偏差値が高くなれば楽には生きていけないだろうけど、中の中という素晴らしいところだったら割と楽と思っている俺。
さっき俺、隣に座るやつなんていないって言ったよな。あれは嘘らしい。メガネを掛け、黒い髪の毛を少し上でまとめたであろうポニーテールに、割と顔の整った女が座ったのである。なんか俺の顔を見ながらスマホをチェックしているようにも見える。「…新手のスパイですか。」と言いかけそうになってしまうほどガン見している。ここまで見られたら聞くしかない。講義の内容はほぼ右耳から左耳に出ていっており、今更勉強の内容を理解するのは不可能この上ない。隣の女…仮に「メガネガン見女」とでも名付けよう。そのメガネガン見女も講義を受けている様子は全くあるわけない。さあ小声で聞いてみようじゃないか…。
祐希「あの…なんですか…?口にごまでもついてますか?」と聞いてみた。…すると無視された。いや本当になんなのかすごく気になるのだが、もう気にしないようにしよう。てか無視する時点で話すことなんて今後できないだろう。なんとか講義を終え、家へと帰ろうとした途端服を引っ張られた。
ーそして声をかけられ…
メガネガン見女「おい、お前が九条祐希か。」と小声でどこか恥ずかしそうに言ってきた。いや怖いんですけど。初対面にお前ってどんだけ気が強いんだよ。ってそこじゃなくて言葉を返さないと…。
祐希「そうだけど?てかなんで無視したんだよ。」
メガネガン見女「講義中に話しかけてくるとは思わんだっただけだ。もう今日は話しかけてこなくていい。」…半強制で会話を終了させれた。誰だったんだよ。てか「もう今日は話しかけてこなくていい」ってどういうことだよ。明日とかになったら話しかけてくるのか…?いや俺は正直絡みたくはないがなぁ。
さて、このマイナスな気分をなくそうとゲーセンにでも行くとしよう。でも一人で行くのもなんだしなぁ…。そうだ、俺の幼馴染である本田樹大先生を誘おうじゃないか。ということで電話を掛ける。prrrrr…「あい、なんだってばよ?」「いやな、ゲーセン誘おうと思ってなー」「お前、俺がゲーム苦手なの分かって言ってるだろ」「いやまぁそうなんだけど、楽しければ何でもありじゃん?」「断る」…切られてしまった。よしいつものメンツである聡太と美咲を誘うしかないようだな。まぁここで使うのがLIKEであって、グループチャットも楽にできてしまうスグレモノ。「おいっすー。暇ならお前らいつものゲーセン行かない?」これでよしと。あの二人ならすぐに返信が返ってくることだろう…と思ったらすぐに二人から返信が来た。その内容は「R」の一文字だけ。これは了解のRということであって、美咲が先に言いだしたものである。今や完全に定着して必須用語となっている。ちなみに、このグループチャット…名前は「変態三人衆」という酷い名前である。こんなの他のやつに見られたらひとたまりもないだろうなぁ。さて10分ほど経った頃だろうか二人が自転車に乗ってワイワイガヤガヤしながらやってきた。
「やっほ!ゲーセン行こ!」
「よぉ。ゲーセンとか子供っぽいなぁ」
「―うるせぇ、暇なんだよ俺は。」
「暇なのはいつものことでしょ?」
「俺だって忙しいぜ、大学とかバイトとか…」
「それみんな同じだろ、てかそれいうと美咲のほうが仕事の方で忙しいと思うぞ。」
「ソウは分かってくれてんじゃ〜ん!そうそう仕事で死にそうなの〜。」
「いや仕事が忙しかったらここ来てないだろ。」
「あっ…それはさ?んー休みの日がいつも寝てるからさ?」
「…もうゲーセンの前なんだし、中入ろうぜ?」
まぁいつも美咲のことを思って聡太が話を進めるのはいつものことだしな…。ただ3人で遊べるものって少ないよな。リズムゲーなんて2人までだし、レースゲームでも2人。やばくね…。他のところに呼べばよかったかも。
「UFOキャッチャーでもするー?」
「お、おう。それがいいかもな」
「俺苦手なんだよなぁー。他ないか?」
…断るなぁああああ!!なんで断ったの?いつも美咲のことを思って合わせるじゃん!?他ねえよ…。まぁブラブラして選ぶしかないな。最悪プリクラ撮って終わりそうな感じがあるな。
「そういえばユウさ、今日なんかあったの?ね?ね?」
「なんでそんな事言うん?てかうざいわ!」
「いやさ、ユウはすぐ顔に出るから。さては大学でなにかあったな〜?」
「大学でしかまあ起こることはないわな。バイトだって喫茶店ですごく物静かにやらせてもらってるし。」
「ふーん。何があったのかぶっちゃけて話そうぜ!!」
「お前ら俺をネタにしたがるなぁ…。いやな、講義の途中に俺の隣の席に変なやつが来てな、口の悪いメガネをかけた女が俺をジロジロ見てた。」
「!!それさ!もっと聞かせて!」
「なんでそんなに食いつくんだよ。そんなに食いつくところじゃないだろ。」
「いやいや、ユウはただでさえ友達が少ないんだから食いつくところでしょ?」
「そうそう。お前友達俺ら以外見たことないぞ。」
「友達そこまで増やした時点で面倒になるだけだしなぁ…てか今で満足してるしいいんじゃね?」
「スリルを求めないタイプなのね。あははは。」
「スリルを求めた時点で意味ないだろ。」
「それは確かに。」
―…なんか俺やっぱりネタにされてるなぁ。正直もう面倒だしいいかなぁと思いつつゲーセンも満喫したし、解散でもしよう。
という訳で解散したあとは一人で本屋や喫茶店を回って帰ってきた。まぁ複数人で遊ぶのもいいんだけど、好きに行動できないからそこまで好きではないな。スマホでLIKEをチェックする辺り人と関わること自体は嫌いにはなれないけど。…変態三人衆になんかメッセージが来ている。
「おっつおっつー。うちも大学行けばよかったなぁ…」
「今からでも間に合うんじゃね。」とりあえず返す内容が見つからずにこう返してしまった。
「いやもううち仕事してるしいいよ。」
なんで言ったし。まぁ構ってほしいからだろうけど。
そんな会話を長々と続けていた、4月23日だった。
まぁ明日はバイトを頑張ろうかなぁ。

―翌日。4月24日。朝はいつも7時に起きるようにしている。高校の頃に陸上部にいてその頃の朝練で何があってもこの時間帯に目が覚める。さて、顔を洗ってコーヒーでも飲むとしようかな。朝は静かに過ごしたいのでテレビなどは全く見ない。もちろんゲームもしない。その後はごみ捨てで…今日の予定としてはバイトか…。ちなみにバイト先は俺の家である酒呑荘の近くにある南庵というところである。もともとここのコーヒーがとても美味しく、3時間ほど読書をして何回も行っていたらマスターから誘われたんだっけな…。ちょうどあの頃はバイトも探していたし、すごく助かったんだよな。ちなみにマスター、南圭介曰く、見た目と少し話した性格で選んだらしい。そこの一人娘の、そんなので選んでいいのかどうか…。今日は大学も行かないし、10時から入るシフトだ。それまでに部屋の掃除をして綺麗にしておこうかな。最近は外に出る機会がとても多く、もう1週間ほど掃除ができていない。一人暮らしってなんでこんなにすぐ埃が溜まるんだろう…。
さて2時間ほど経っただろうか。なんか掃除ってしだすと時間を忘れるよな。。。ん?バイトの時間じゃねえか!!!やらかしてしまった。すぐにマスターに電話して遅れることを伝えないと…。
prrrr…
「あ、すみません!九条です。少し遅れそうです…本当にすみません…!!」…許してくれるだろうか…。
「あぁ、九条くん、大丈夫だよ。なるべく早くに来てくれたらありがたい。」
「ありがとうございます!!すぐに向かうんでよろしくお願いします…!」
という訳で許してもらえたのだが…なんというかアッサリしすぎな気がしないでもないような。とりあえず急いで向かおう。さて南庵まで自転車で10分ほどで着くのでぶっ飛ばさないと。遅刻したのは初めてだし、なんといえばいいのか…初めてとはいえ危機管理能力なさすぎるな俺…。
AM10:36。頑張って自転車でぶっ飛ばしたので6分で着いた。
「おはようございます。すみません…!家で掃除していたら時間を忘れてしまいました。」ありのままを言ったほうが俺の中でも罪悪感はないだろうし、マスターも分かってくれるはずだ。
「ああ、おはよう。それは仕方ないね。嘘偽りなさそうだし今回は許すよ。」
「ありがとうございます…。早速、準備に取り掛かりますね。」
さてようやく落ち着いた感じだ。俺がここでしていることは、コーヒーや紅茶を入れることはもちろん、客が帰ったあとの後片付けや洗い物など、喫茶店としては割とありふれたようなバイト内容だ。なんと言ってもここで流れているクラシック音楽は最高だ。なんとなく眠くなる感じはあるが、バイトである自覚をして、一応気は張っている。
「あ、ユウくんおはよう」
「あぁおはようございますー。」
「今日遅刻したんでしょー?親父許してくれた??」
「すみません、、掃除してたら遅れちゃって…。マスターは許してくれましたよ。」
「それはよかったね。それとさーそろそろ私の名前を呼んでくれてもいいんじゃないかなぁ?」
…この人は南結衣さんと言って、マスターの一人娘らしい。
「すみません、結衣さんでいいです?」
「それでいいけどさー、一応ユウくんの方が歳上なんだし、タメ口でもいいんだよ?」
「まぁ年齢的にはそうでしょうけど、ここでは結衣さんの方が先輩ですしね。」
「九条くんは本当に真面目だなぁ。そういうところが分かってて入れたんだけどもね。はっはっは。」
「あはは…でもいきなりタメ口ってどうなんですかね?実際この3人だったら俺が一番最後に入りましたし。」
「私は構わないけどね〜。というかそんなの気にしてるのユウくんだけだと思うよ?ねぇ親父ー?」
「ああ、九条くんが入ってきて初めて先輩後輩を意識し始めたよ。あとここでは親父って呼ばないでくれ。」
「は、はぁ。まあでも俺はこのままで行きますよ。これで慣れちゃってますし、楽なんですよね。」
「ほんっと真面目なんだからー。」
客がいないとこんな会話ばかりで楽しいのは楽しい。ただ今日俺謝るし、いじられるし、今日も疲れそうだなぁ。
そこから数時間経ち、PM3:45。
「九条くん、上がってもいいよ。今日もお疲れだったね。」
「お疲れさまでした。」
「お疲れだよー、また明後日ね!あ、遅刻しないでよ!」
「あ、はい、明後日ですね〜。遅刻はもうしませんよ。」
といいつつ少し怖い俺がいるのはなんだろう。さて、帰りくらいはゆっくりして帰ろう。…ピーピー!…ん?なんだろう。正直こんな日にメッセージが来るってどうなんだろう。今日土曜だし遊びとかなのか…??非通知が来ている。正直非通知で来る相手が全くわからない。てか誰なんだよ。正直怖いのであまり出たくないな…。変な業者なのだろうか。
まぁ忘れてまた本屋に寄ろう。今俺の中では「サキュバスが彼女」というラノベにすごくハマっていて、3巻まで読んでいて現在18巻まで出ているのですべて読まなければならないという使命がある。内容は、いきなりサキュバスが現れて主人公が告られて断るけどダラダラ関係が続くという話である。とはいえ、お金をそこまで持っているわけでもないので、徐々に買っていっているわけである。いずれは大人買いをしてみたいなぁ。
さて今日は4巻目を購入できた。値段は税込み680円で多少高め。よし帰ったら読むとしよう。
1時間後帰宅。
だらだらとソファーに座りながら本を読むのが唯一の気休めと言ってもいいくらい最近はハードだったが、ようやく楽ができる。
その夜、美咲本人からメッセージが来た。
「ねーねー。この前言った子のこと覚えてる??」
「お、おう。」(ここだけの話ほぼ忘れてたぞ。)
「いやね、その子にお前の電話番号教えたんだよね?」
「は?勝手に何をしてくれるんだよ。まだ顔も知らねえぞ?」
「もしかしたらさ、もう電話をかけてるかもしれないよ?」
「……あっ。そういえば非通知でかかってきたけど、もしかしてそれか…?」
「多分それと思うよ。あははは。」
「次電話を掛けるとしたら電話番号ありでしてほしいもんだね。」
「ははは。ならそれを伝えとくよ♪」
おいおい、普通非通知でかけるか…?なんだか気が狂う2日間だったな…。自分自身の過剰な思い込みと思いたいけどどうなんだろうなぁ。

―翌日。4月25日。いい具合に熟睡できたと思う。今日は大学に行こう…。正直乗り気になってないのは昨日一昨日とろくなことが起こってないからだ。…まあそんな事を言ったって頑張ってレポートとかもまとめておかないとなぁ。
てかスマホの通知すごいなぁ…ん??どこかも知らない番号から不在着信が13件も来ている…朝っぱらから誰だよ。正直怖いんだけども…。もしかして昨日のやつなのか?いやそれにしても夜中の3時とかに電話かけてくるとか何者だよ。もしかして昼夜逆転してるのかなぁ。ってなんで顔も性格もわからないやつ心配してるんだ?
まだ朝の8時位だし電話をかけても出てくるか確率は半々だな。でもここまでかけてきてるならこっちからかけてもいいでしょってことでかけてみることにした。
Prrrr…prrrr…でねぇ。正直13件も不在着信にさせたくないしもうやめとこうか。
ということで朝のティータイムをしよう。やはりなにもせず静かに飲み物を飲むというのは最高だ…。そして昨日買ったサキュバスが彼女を読んでいく…。なんていい朝なん…ピーピー!ピーピー!…は?せっかくのティータイムがあああああ!!
仕方ない…出るしかないよな。
「はい、もしもし?」
「ようやく出たか。夜に電話したのになぜ出ない。」
「バリバリの真夜中じゃねえか!!寝てるに決まってるだろ!てか誰だよ!?」
「ふん、お前とはちょっと前にあっているはずだ。」
「だから誰だってばよ…」
「黒瀬だ。黒瀬ユウ。覚えとけ。」
「え?あんたにあった覚えはないんだが…。」
「まあ大学の講義で待つ。」
と切れた。何者だよ。てかこの喋り方どっかで聞いたっけなぁ。あまり覚えてないけど、まああったらわかることだろう。はぁ。なぜか嫌な予感がするけど、仕方ないよな。行くしかない。てかこの前言った時間帯でいいのかなぁ。何時でもいいならあいつ色々と溜まりすぎだろ…ってまたよく分かってない人の心配してんじゃん俺。別に気にかけてるわけでもないのになぁ。というかまず美咲はなにをしたいんだよ。電話番号教えやがって…。単刀直入にいずれ聞かないといけないかもなぁ。
さて今日は気分転換もしたく、大学まで自転車で行くことにしよう。普段は最寄り駅の「先山駅」まで自転車でそこから大学前まで行くわけで、まぁ今日の俺のようなストレス日和には良くないのだ。大学までは10kmほどあるが、元々サイクリングのサークルに入っていたが、バイトを気に止めてしまったわけだ。まあだからそれなりにまだ体力は残ってるんじゃないかなぁ。ということでそろそろ出ることにしようかなぁ。スマホの地図アプリを開き、そこから桜舞大学を検索して目的地セット…。そして自転車にスマホをつけてさあ、レッツゴーだ。たまにはこの自転車も使ってやらないと可哀想だよな。まあこういうときに限ってよろしくないことが起こるんだよな…。ん?フラグじゃないぞ。このフラグで喜ぶやつっていないと思う…。
数km走った頃だろうか。俺は信号の待ち時間にLIKEの通知を見ようとスマホを取ろうとした瞬間、スマホフォルダーの後ろに隠れていたであろう蜘蛛さんがこんにちはをしたのだ。俺虫苦手だっつ〜の!!あああああっ!!ぐはっ!まさかの蜘蛛のせいで転げてしまった。おそらくこの蜘蛛には数ヶ月は根に持つことだろう。見事に転げたせいで両手首を負傷してしまった。幸いにもここはまだど田舎で周りには多少の住宅と交差点のみ。誰にも見られてな…遠くで誰かが見ている…!?黒く長い髪の毛にポニーテール…さてはメガネガン見女か。なんてやつに見られたんだ。てかあいつも自転車で行ってるのか。それが毎回だとしたら結構すごいんじゃね…?ってまた気にかけてるし。今日なんて会ったら絶対ろくな展開にならないよな…。あいつには会わないようにしておかないと。いやほんと大学でなぜか肩幅が狭くなってきてないか俺?大学ではほぼ誰とも話さないけど、誰かを避けるような学生生活なんて今までしたことないぜ。あはは。まああと一年の辛抱だな…。
―というかマジで手首がヒリヒリする〜…。ちょうど手首のあたりって血管通ってるし、よく動かす場所だし、気にしないようにしてるけど、見てみたら白い皮膚の周りに赤い血が滲んでいた。あぁ。これって猛烈に痛いわけではないのがまた嫌なんだよな。大学に着いたらトイレに行って手首をちゃんと洗わないとばい菌が繁殖してしまうな。
さてあれから20分くらいかな。大学には着いた。まばらに人がいる中で俺は真っ先にトイレへと手を隠しながら向かっていく。こんなの久しぶりに自転車で通学してトイレをめちゃくちゃ我慢してました。と言わんばかりの見られ方をされそうだなぁ。俺は実際はトイレじゃないんです!と目で訴えつつトイレに向かい手首を洗う。ただ洗うだけだと治らないよな…。帰りにドラッグストアにでも向かわないとなぁ。電車賃をなしにしたのに余計な無駄金を使ってしまった。…いや電車賃も何も定期持ってるから余計無駄金だ。アホか俺…!
といってももう終わったことに何を言っても戻らないし、講義へと向かおうかな。そういえば今日黒瀬ユウ…だったか。そんなやつと話さないといけないんだよな。め、めんどうなぁ。でもどんな顔の人かすごく気になるし、どこか期待している俺がいた。正直真夜中に電話をかけるやつに期待なんて普通はしないのになぜだろう。美咲繋がりだからか…?美咲もロクなやつじゃないけど、最低限すぎるマナーはあるしな…。
ちなみに言うのを忘れていたが、俺は講義のときに座る席を決めている。左端の一番上で、なぜかって?静かに勉学に集中できるからかな。あと端っこってどこか安心感がある気がするってのもある。ちなみに俺のアパートである笹野荘も一番端の201号室だな。まぁ立地条件は最悪だが…。まぁ話を大学の話に戻して、いつもの左端、一番上にやってこれた。やっぱ俺はここしかないぜ。ノートを用意して講義の準備は完了だ。
そこにあるやつが走ってこっちに来たのであった。黒いロングヘアに黒縁メガネの…あ。メガネガン見女のやつ…さっきの転げた姿をバカにしに来るのか…。

―おい。自転車から転げたどアホ。

すごい言いぐさだ。
「その言い方本当にやめろ。まるで俺がマジでアホみたいじゃないか。」
「ふん。実際お前はアホだろうが。それよりお前の気持ちの悪い転げ方を動画にとってやったぞ。光栄に思え。」
「おまっ…!!なんてことをしてくれるんだ!というかそれ普通に盗撮でしょ!?俺の人権はないのかよ!?」
「はぁ?お前に人権なんてあるわけ無いだろうが。まぁあとで話したいことがある。それまで待て。」
「ふざけんな。お前の話したいことってろくでもないことだろうが!」
…あれから返ってくる言葉はなく、講義は始まった。正直人の席を横取りしてまでこんな事を言ってその気まずい空気の中講義を進めたくはない。という訳で席を変えようと思った瞬間―

服を引っ張られた。なぜ俺を引っ張る…。何を話そうとしている…。なんと言おうとしても俺は話を聞くわけ…。
そこにはどこか罪悪感のあるようなそんなメガネガン見女がいた。正直この顔には裏があること間違いないだろうし、暴言を吐きまくるのは間違いないだろう。…ただ、服を引っ張るとはなにか意味があるのだろう。
講義が終わり、俺は喫茶店でゆっくりする予定だったが…
メガネガン見女「おい。」…そうだったな。しかし俺はあまり話をする気がない。ろくな展開にならないからだ。
俺「なんだ。話は完結に済ましてくれ。」
メガネガン見女「ふん。お前に私の名前を教えてやる。」
俺「なんだ、いきなりかよ。」
メガネガン見女「井上奈央。分かったら返事しろ、九条祐希。」
俺「井上ねぇ…ってなんで俺の名前を知っている!?」
井上は無言のまま帰ってしまった。本当になんで俺の名前を知っているんだ…。ストーカーなのか?本気で怖いぞこいつ。というかこいつは何目的でくっつこうとしてるんだ。

―井上奈央ね。ただアイツ…名前を言うときになんで目を合わせなかった上に声が少し小さかったんだ?さては偽名とか…?んなわけ無いか。最近俺の周りに変なやつが増えたよな。喫茶店でLIKEのグルチャで相談してみようかな。正直滅入ってるし。
てか冷静に考えて話したかったことって名前を伝えるだけ…?頭おかしいだろ…。

「すみません。アメリカンで。」
「はい。少々お待ちくださいませ。」
最近俺はバイト先で飲めなくなった…というか気まずいので、他のところを見つけたのだ。その名も「麻田珈琲店」だ。すごく静かで読書をしたりレポートを書くのに最適なのだ。本当に俺って大人数に混じらないよな…あはは。決して嫌いなわけじゃないけど静かだと心がとても落ち着くんだよな。
とか思いながら5分ほど待ってると、
「おまたせしました。コーヒー無糖です。ごゆっくり。」
「どうも。」
さてコーヒーが来たところでグルチャこと変態三人衆に相談してみよう。とか言ってもなんて相談したらいいんだろう。こういうのってすごく迷うよな。まあ適当に「ちょっと最近変なやつに絡まれてて…」とでも書いて送ってみることにした。
そして10分ほど経ち、返信が来た。
「それってユウが変だからじゃないの?」
「類は友を呼ぶって言うしね〜あはははは♪」
うぜえ…というかこっちは真面目に聞いているんだよ。というか喫茶店いるのにイラつかせるなよ。でもまぁ、アイツらは俺が今喫茶店って知らずに返してるんだよな…。にしてもこの対応は異議を申し立てたい。
仮に異議申し立てをした時点でどこかの運営の固定メールのようにバカにしたような否定した定型文をアイツらは送りかねない。
そんな事を考えているとコーヒーが冷めて美味しくなくなってしまうな…。まあもう既に30分ほど経ってるので、美味しくなくなってると言われたらそれまでなんだけど…。まぁでも雰囲気で美味しさは倍増かな。結果的に冷めてもここのは美味い。
さて2時間ほど経ち、読書をしたりレポートをまとめたりしたのだが、それとなく気が落ち着いたので家に帰ることにしよう。

「420円です。」
「はい丁度。」
「ありがとうございましたー。」

今日もゆっくりしすぎたか…。でも癖になっておりゆっくりするのがやめられない。…ん?なんかアイツ見たことがあるような…誰だ?すりガラス越しで見えにくいが話は聞こえる。店員と会話するのか、そのモヤモヤがなくなりそうだし少し盗み聞きでもするか。
「利奈さん、今日はもう上がっていいよ。」
「あ、どうもです。でもさっきの人うちの知人であまり…。」
…利奈で知人…元カノじゃねえか!!というかまた行きにくくなる場所に…はぁ…。
「あ、そうなの?どんな人なの?よくウチくるから気になるよ。」
「あはは…まあ優しいとは思います。ただ価値観が合わなくて…。」
「それって元カレってこと?」
「そ、あ…。そうですね。」
「ヨリは戻さないの?」
「まぁうち自身は気がないこともないんです。ただ恐らく復縁は無理でしょうね。まぁ別れたには理由があるってことで。あはは。」
「だね。あはは」

なんという会話聞いたんだろう。まあ利奈を振ったのは俺だし、あれから連絡も取ってない。仕方ない。ただ、振った理由としてもアイツのためでもあるんだ。俺には親がいない理由の理解とかが得られるかわからなかったし。さて帰ろうか。
そういえば、俺そろそろ買い物しないと食べるものが作れなくなるな。買い物を帰るついで行っとくか。

―買い物はいつもまとめて買う派で、一食分だけのために買いに行くのが面倒。いやこうやって1週間分ほど買うのは割と真面目に俺以外にもいたりすると思う。なんだかんだで色々とあるが自炊はしていて、利奈にも作ってたことはあった。味自体は普通だと思うけど、まずくない自信だけはある。あぁそういえば最近は誰にも料理を作ってないなぁ。別に振る舞いたいというわけでもないけど、でも一緒に食べる相手はほしいと思う今日このごろ。
さてスーパーに着いた。割と古めかしいスーパーで、少し錆びた看板には「スーパージューシー」と書いてある。いつも俺はこの古めかしいスーパーで買い物すると決めている。客は俺のような若者から、昔からの付き合いのご高齢の方までというかなり愛されているスーパーなのだろう。さてまぁここにしかないものとかは特になく、野菜や冷凍食品、カップ麺などどこにでもあるであろうものを買う。単純に家から近いという理由。だがそれがいい。
「2987円です。」
「3000円からで。」
「13円のお返しです。ありがとうございましたー。」
と、買い物は終わった。明日はバイトだし、本当この繰り返しすぎて笑えてくる。自転車のかごに買い物したあとのバッグを置いて、全力疾走で帰って夕飯の支度。買い物した日は色々と遅れるのでご飯を炊く合間に風呂を洗い、お湯をためて、料理をして…先に風呂に入って食べるというルーティン。我ながら行ったり来たりなのですごく忙しいことこの上ない。でも慣れてるからそれはそれでいいとも思ったり。
…休憩しようと思い、スマホを確認する。どこか知らない電話番号からメッセージ。いや今日の朝のやつか…?えっと黒瀬だったか…。そこには文章がなく、画像のみ添付されてるだけだった。

―朝の自転車から転げた写真―

……は?えっとどういうことだ…?

俺の思っていた恋はこんなのじゃない!

俺の思っていた恋はこんなのじゃない!

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2020-08-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted