朝について

朝について

学校の屋上には鍵がかかっていて、とうていマンガみたいな真似はできなくて。そう、だから、飛び降り自殺した子もいないらしい。しらけている。
朝だよ、おはよう! 朝がきみに襲いかかる、きみはぱっと目を覆った。一日が出発してしまうんだと覚悟を決めた。今朝のきみに似合わない神聖な朝焼けだから、ぶっ殺してやりたいって思うでしょう。お願いだからその衝動を「やばい」ことだと決めつけないで。青春ってイメージで覆ってあげてね。まだ夏だから降らないはずの雪が降っていたら、きみはこのまま屋上まで階段を駆け上がるだろう。偶然か必然か、屋上の鍵は開いていて、きみは手すりを恨むでしょう。朝と同じように白い色で塗られているから。だけど安心してね。手すりはもうすでに生きていないから、命なんて持っていないんだよ。そのむなしさといっしょに始業のチャイムは鳴る。その前に教室に戻ってね。きみは、凡庸でないといけないんだ。
朝だよ、おはよう! そういう言葉に代用されるさつじんしょうどうをずっと忘れない、かわいい女の子のままでいてほしいな。それがきみの青春で、きみが十代だった唯一の証拠になるからね。

朝について

朝について

今朝のきみに似合わない神聖な朝焼けだから、ぶっ殺してやりたいって思うでしょう。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-17

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