追憶の海
時間も場所も決めない待ち合わせをする度に
最期まで逢えなかった人の姿がよぎる
追憶の沖では 筏のような氷島が悠々と浮かんでいて
そこにはもう逢えない人達がいるんだろうと
いつも なんとなくそんな気がしていた
偶然、岸に漂流したそれに触れようとすると
目には見えない結界のようなものが張られていて
手をとることはおろか、
声を聞くことも出来なかった
熟れた実をひとり頬張り、
その種を埋めることの繰り返し
誰か、誰でもいいから替わってくれよ、と思う
替わってくれよ、早く
報われない憂いの洪水に溺れてしまいそうになる
きょうの海はいつになく、深い藍色をたたえていた
追憶の海