落ちた太陽

ただのゆめ

夢だ。
そう、思った。
そう、思いたかった。

空は、真っ青だった。
よく晴れていた。
快晴だった。
でも、
太陽は見当たらなかった。
太陽の無い、
真っ青な、
空だった。

地面は、真っ白だった。
とても綺麗だった。
純白だった。
でも、
それは柔らかな雲だった。
暖かくない、
真っ白な、
雲だった。

遠くに、樹が見えた。
葉が茂っていた。
新緑だった。
でも、
緑の葉は散っていた。
若葉さえ、
音も無く、
散っていた。

樹に向かって、走り出した。
雲の表面の凹凸は不規則に移り変わり、
巧みに足を引っ掛けた。
転んで、膝をぶつけた。
傷は無かったが、
確かに痛みが出来た。

それでも、走り続けた。
何かの傍に居たかった。
一人ぼっちは嫌だった。
寂しかった。
怖かった。
そして、
泣きたかった。

頬に、何かが触れた。
雨は下から降ってきた。
靴の裏が雨に打たれる音が、よく聞こえた。
大雨に換わるのに、時間はそうかからなかった。
視界から緑色が消えた。
でも、
足は止めなかった。
止まらなかった。

雨が降り続いていた。
だけど、視界が開けた。
一歩先には雨は降っていなかった。
でも、
踏み出せなかった。
そこに雲は無かった。

樹の幹は遥か遠くに見えた。
樹は雲を突き破り、空まで伸びているようだった。
雲間から下へ視線を向けると、
真っ青な、海が見えた。
陸地はなく、
ただ、海があった。

その中には、
オレンジ色の太陽が一つ、
転がっていた。

落ちた太陽

意味なんてありません。きっと。

落ちた太陽

ただのゆめ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-13

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