残念ながら僕は元気です。

残念ながら僕は元気です。

毎日うだるような暑さだね。街路樹の葉っぱから透けて見える光に気づけたなら、その日はまちがいなくしあわせな一日。都会にもあった、いきものの息遣いを感じている。空はきれいな青色。駆け抜けても、ゆっくり歩いても、楽しめる夏の一日。
みなさん、残念ながら僕は元気です。
あなたのことを無視して、楽しく息をしています。暑い中食べる激辛ラーメンは最高ですね。700円払えば、5分でごはんにありつけるしあわせ。40分であじわうしあわせ。twitterを開けば、「タヒね」って打ち込めるしあわせ。もういっそのこと5歳になる前に死んでいればよかったんだ、と身勝手に不幸になれるしあわせ。人間の目は、明るすぎるところでものが見えなくなることがあるらしい。15分おきに僕の目は乱視になっているようだ。僕より物書きの才能がある人は、この世にごまんといるよ。でも、自分は才能があるって信じ込んでいるせいか、才能ってどうだってよくて、僕だけが世界一であるような気がしているんだよね。これが喜劇なのか悲劇なのかはわからないまま、とにかく心臓だけが体内にどろどろした血をまきちらしていて、僕の眼球と、僕の脳味噌を置き去りにしたまま、夏の残りかすは完全燃焼するんだろう。それでも熱中症にはならないだろうから、みなさんの期待に反して、残念ながら僕はすっごく元気です。

残念ながら僕は元気です。

残念ながら僕は元気です。

15分おきに僕の目は乱視になっているようだ。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-15

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